石破茂氏「防衛力整備の財源は法人税で賄うべき」 「自衛官が国会でもっと議論してこそ文民統制」

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塩田:もう1点、憲法について、日本の安全保障に役立てるために最も重要だと思う憲法問題はどの点だとお考えですか。

石破:それは文民統制をきちんと確保することではないんでしょうか。

塩田:憲法には第66条第2項に「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」という規定がありますが、文民に関する条項はそれだけですね。

多重の文民統制の構造が必要

石破:軍隊はその国における比類ない実力を持った組織で、同時に使命感や正義感が強い人たちが大勢いるところです。今の政治は間違っている、苦しい国民の暮らしを省みていないのでは、といった正義感に駆られた大実力集団が、もしその気になれば、政府なんて、あっという間に倒れてしまう。古今東西、あまたあることです。だから、多重の文民統制の構造が必要なのです。それは人類の知恵と言ってもいい。

それでは、現行憲法下で自衛隊に対する司法・立法・行政によるコントロールがちゃんとできているかどうかというと、自衛官が国会で何も答弁しない現状では、文民統制の立法によるコントロールができるとは、私はまったく思いません。

司法によるコントロールも、自衛官の人権を守るためにも必要です。普通の社会で人を殺せば殺人罪、でも有事では国家の任務です。いわゆる戦闘の現場で起こるいろいろな現実を何も知らない裁判官、検事、弁護士によって自衛官が裁かれるとしたら、それは怖くて行動できない。

逆に戦前の軍法会議のように、非公開で、弁護人も付かず、一審だけというのも憲法違反になります。最高裁判所を終審とする仕組みを維持しながら、自衛隊審判所というものをつくらないと、自衛官の人権は守れない。憲法の議論は行われていますが、この問題も取り上げなければなりません。

塩田:2012年に自民党が起草した「日本国憲法改正草案」の新しい「第9条の2」の第5項には、「法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない」という規定があります。

石破:だから私はこの自民党の草案に立ち返るべきだと思っているのです。安倍総理の第9条案の「第1項、第2項はそのままにして、新しい『第3項』に自衛隊を書く」という案を起点にしてしまうと、他の問題が議論できなくなってしまうんです。

塩田:国会の中で、安全保障や憲法の問題で同じ考え方、同じ方向を目指す人たちが、与野党の枠を超えて新しい大きな固まりを作るというような動きが起こる可能性は。

石破:時流に合わせたほうが自分の身は安泰だと思う人たちが多い限り、それは難しいでしょう。今はむしろ、野党の側にも安全保障や憲法について突き詰めて考える人たちがそれなりにいることのほうが大切かもしれません。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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