クックパッドの年間ではなく最新の四半期報告書から、その後の状況を読み解く。残念ながら会員売上等が好調とは言いがたい。課金対象の会員数も減少している。各セグメントも出血を止めたとまでは言いにくい。これからも同社の決算に注視していきたいと私は思う。なお、「2023年12月期 第1四半期 決算補足説明資料」においても全28ページのなかで、連結業績は15ページからやっとはじまる。
ではクックパッドの業績背景は何か。
さきほども触れたとおり、他サービスの台頭がある。投稿レシピのサービスはほかにもたくさんある。アプリも充実する。クックパッドのレシピ情報量は凄まじいが、量が多すぎて選択が難しい。有料課金をしてもいいが、それならば、インスタグラムで有名インフルエンサーの投稿を見たほうが早い。写真とともに簡単なレシピが書いてある。さらにコメント欄から他者の意見も確認できる。
またインスタだけで物足りなければYouTubeでもいい。調理をする人のキャラクターを含めて楽しめる。Twitterならバズった料理のレシピの連投も確認できる。いまでは長文をTwitterで公開する人もいる。
しかしそれでもなお、クックパッドの課金対象が164万人もいることは注目できるだろう(なお前年同期時点では180万人)。レシピと他分野の連携、ならびにほかの付加価値を提供できるかがカギとなる。
現在は苦境に陥るくらい競合サービスが発達
ところで、本原稿でクックパッドの決算説明会資料のユニークさを紹介したが、そこには奇異さを伝えたかっただけではなく、もう1つ理由がある。
この説明資料いわく<クックパッドは、食の世界を良くするには、料理をするひとはもちろん、農家など食に関わるものをうみだす「つくり手を増やすこと」だと考えています。><料理をとおして、他の人とのつながりが楽しみとなり増えていくようにしたい。料理を、ヒト、社会、地球の健康に貢献していると自信をもって続けていけるものにしたい。>などと並んでいる。
ここから書くことは皮肉ではない。ただ、この決算報告資料を読んで強く感じたのは、クックパッドが苦境に陥るくらい競合サービスが発達している現在こそ、クックパッドが思い描いた世界が実現しているのではないか、という逆説だ。
以前は、雑誌とテレビくらいしかレシピを求める手段はなかった。しかしネットが登場し、双方向になり、さらにSNSで莫大に広がった。地球のどこにいても世界中のレシピが手に入り、さらに人気のレシピもすぐにわかる。
つまり料理のレシピ入手における格差はほぼなくなった。誰でも、どのような料理でも調理できる世界が広がっている。これこそクックパッドが求めていた時代ではないだろうか。
そのなかで「世界中のすべての家庭において、毎日の料理が楽しみになった時、当会社は解散する」とまで掲げた会社がどうするか。私は楽しみにしたいと思う。
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