「いくつになっても学びたい」と思う人が抱く誤解 一人で道を極めても「若返り」にはならない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

70歳を過ぎて水彩を習い始めた男性がいます。高校時代まで美術部にいて絵が好きでした。定年で現役を退いて再雇用で仕事は続けていましたが、もう一度、ちゃんと絵の勉強がしたくなったそうです。

「水彩なんて絵具と絵筆があればいい」と自分で勉強するつもりでいたのですが、自治体の教室案内に水彩コースを見つけてふと習ってみようという気になったそうです。

「おれはまだ高校生のままだな」という気持ち

教えてくれるのは、美大を出て子どもたち向けの絵画教室を開いているまだ30代前半の男性でした。もちろん自分でも絵は描いていますが、それだけで食べてはいけないのでしょう。「こんな無名の若い先生で大丈夫か」という気もしましたが、自分だって絵筆を持つのは60年ぶり近いのですから「ちょうどいいか」と気楽な気持ちで習い始めたそうです。

心が老いない生き方 - 年齢呪縛をふりほどけ! - (ワニブックスPLUS新書)
『心が老いない生き方 - 年齢呪縛をふりほどけ! - 』(ワニブックスPLUS新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

思いがけずも熱心な先生で、10人ほどが習う講座も活気があります。最初はまずデッサンの勉強から始まったのですが、高校の美術部時代はみんな我流です。それぞれが好き勝手に絵を描いて得意がっていただけですから、デッサンの勉強だけでずいぶん厳しく教えられたそうです。

そのうちだんだん夢中になってきました。最初は頼りなく思えた先生ですが、自分の師という意識がどんどん強くなってきます。そうなると40歳の年の差なんか消えてしまいます。

「おれはまだ高校生のままだな」と思えば、気持ちもどんどん若返っていきます。妻に「何だか顔がキラキラしてきたね」と言われたときには嬉しくてたまらなかったそうです。

和田 秀樹 精神科医

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事