中国の製造業の景気が粘り腰を見せている。6月1日に発表された2023年5月の財新中国製造業購買担当者指数(製造業PMI)は50.9と、前月(49.5)より1.4ポイント上昇。好不況の判断の目安である50を2カ月ぶりに上回った。
ただし留意すべきなのは、前日の5月31日に発表された中国国家統計局の調査に基づく製造業PMIが逆のトレンドを示したことだ。国家統計局の5月の製造業PMIは48.8と、前月(49.2)より0.4ポイント低下。2カ月連続で目安の50を割り込んだ。
2つのPMIは一方が景気回復、もう一方が後退を示唆した格好だ。同じ製造業でも業界や個別企業によって景況感がまだら模様で、調査対象の違いからこのような結果になった可能性がある。
5月の製造業の事業活動を見ると、供給側の指標である生産指数は拡大基調を維持し、2022年7月以降の最高値に上昇した。需要側の指標である新規受注指数は、拡大基調と縮小基調のボーダーラインを4月にいったん割り込んだが、5月は再び拡大基調圏に浮上した。
雇用悪化に歯止めかからず
気がかりなのは、需給の改善が雇用増加に直結していないことだ。5月の雇用指数は3カ月連続で低下し、2020年3月以降の最低値に落ち込んだ。調査対象企業からは、「今はコスト抑制を優先し、離職者の補充を後回しにしている」との声が多く聞かれた。
原材料価格やエネルギー価格の値下がりを背景に、製造業のコスト圧力は緩和している。製造業の仕入れ価格の指標である購買価格指数は、5月は前月よりわずかに上昇したものの、ボーダーラインを大きく割り込む水準で推移した。販売価格の指標である工場出荷価格指数も、企業間競争が激化するなかで同様の動きを示した。
景況感の好転にもかかわらず、製造業の経営者の向こう12カ月間の楽観度を示す指数は大きく低下し、5月は2022年11月以降の最低値を記録した。経営者の多くは、不安定な経済情勢の長期化が経営に与える悪影響を懸念しており、とりわけ外需の先行きへの不安が大きい。
(財新記者:範浅蝉)
※原文の配信は6月1日
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