新聞・雑誌にまた災難、東日本大震災で紙の次はインキ不足が痛撃
「危機的状況」--。印刷インキ工業会は3月25日、新聞や印刷インキが供給不足にある“非常事態宣言”を出した。在庫は1カ月程度しかなく、その先は見通しが立たないというのだ。
震災直後に新聞・出版業界を襲ったパニックは紙不足だった。日本製紙の石巻工場や岩沼工場などが津波被害で全面操業停止。全国紙を中心に一部地方紙も減ページで対応した。また出版業界では、東京・有明一帯の紙倉庫の荷崩れ被害に物流難が追い打ちをかけた。3月25日時点で発売延期となった雑誌は234誌、発売中止となった雑誌は16誌に上った。
ただ、足元では「配送体制はほぼ復旧した。紙も品質を問わなければほぼ足りる状況」(日本雑誌協会の高橋憲治事務局次長)という。新聞も日本製紙の岩沼工場が11日から順次操業再開するなど、状況は改善しつつある。
その矢先、紙より深刻な供給不足が明らかになったのがインキだ。インキの出発原料となるジイソブチレンを国内で唯一生産する丸善石油化学の千葉工場(千葉県市原市)が被災。生産は滞ったままで、「設備の復旧には最低でも1年はかかる」(同社)。
このため、インキメーカーの間では、代替原料を使ったインキ生産や、海外の生産拠点からインキを緊急輸入する動きが出ている。
新聞協会によると、「新聞インキは限りなくオーダーメード。輸入インキは使えず、代替原料品が第一の選択だ。3月下旬に、一部新聞社が代替品をテストして問題なかった」(佐塚正樹経営業務部長)。最悪の事態は避けられそうだが、予断は許されない。