EV起点に脱炭素ビジネスを創る住友商事の野望 通勤用マイカーをEV化、蓄電所ビジネスも始動

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EV普及には、用途の拡大も不可欠だ(編集部撮影)

住友商事がEV(電気自動車)関連事業に本腰を入れ始めている。

東京・神田錦町のオフィスビルには、真新しいデスクが並ぶ「Hakobune(ハコブネ)」の事務所がある。Hakobuneは、住友商事が100%出資するベンチャー企業。会社員が通勤で使うEVのリースとエネルギーの提供事業を4月から始めている。

「Hakobuneの社名には、クルマが従業員だけでなく『電気を運ぶ』という意味と、EVを普及させていく際のさまざまな課題について、われわれが解決していきたい、ノアの方舟のように世の中の救いになるような存在になりたいとの思いを込めた」

2022年5月に日産自動車から住友商事に転職し、Hakobuneの社長に就任した高橋雅典氏が言う。

通勤用のマイカー2500万台をEV化

国内で走る約8200万台の自動車のうち、通勤用に使われているマイカーは2500万台。Hakobuneが狙うのは、この通勤用マイカーのEV化だ。10年後にガソリン車数十万台のEV転換を目指す。

「マイカー通勤では1台につき1日で片道平均13.4キロメートル走るというデータがある。これだけ走るガソリン車1台をEVに置き換えると、年間1トンほどの二酸化炭素(CO2)削減につながる」(高橋社長)

単に通勤マイカーをEVに転換するだけではない。日中、車を会社の駐車場に停めている間に、社屋の屋根や敷地に設置した太陽光パネルで充電する。場合によって車が蓄電池にもなり、系統安定に必要な調整電源としても活用できる。給電設備を置けば、夜間は従業員の自宅の電源として使うこともできる。

EVの調達などは住友三井オートサービス、充放電機器などの調達は住友商事マシネックスやTGパワーと連携するなど、総合商社のグループ力あっての事業だ。

脱炭素や、利用する従業員にとってのメリットは大きいが、課題はコストだ。これまで企業は従業員にガソリン代を補助する程度だったが、Hakobuneのサービスを導入するためには、充電・太陽光発電設備の設置費用やリース料を負担する必要がある。

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