EV起点に脱炭素ビジネスを創る住友商事の野望 通勤用マイカーをEV化、蓄電所ビジネスも始動

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「企業は脱炭素に取り組む姿勢を示すこともできるが、導入効果で大きいのは従業員のメリットだ。人材の確保に苦労している地方の企業にとって、採用時の差別化になる」とHakobuneモビリティビジネス開発部の福田絵未部長は話す。

日本では1世帯平均2.2台の自動車を保有しているとされ、その維持には、燃料代のほかにローンや保険、車検や税金など多くのコストがかかる。そのうち1台でも会社からの貸与となり、自宅の電気も賄えれば、従業員個人の家計にも優しいというわけだ。企業によっては、休日に貸与されたEVを使うことを認めるかもしれない。

「マイカーを手放して、通勤手段を(会社の)EVに変えることで出費も軽くなれば、『これはいい』と言う人が企業の中で1人、2人と増えてくる。そうなれば自ずと企業のトップも動くと思う。車を使う個人の気持ちに沿って、マイカーに比べていかにリスクが少ないか、コストメリットがあるかを訴えていけるかが(導入拡大の)カギになる」(福田部長)

日産出身の高橋社長(右)とホンダ出身の福田部長(中央)。自動車メーカーにはない発想で新ビジネスを立ち上げた(記者撮影)

人口減が進む地方で導入

Hakobuneの事業に早速、関心を持った企業が鳥取県にある。精密プレス金型の設計・製作を手がける「ササヤマ」だ。笹山勝社長は本業の金型の仕事で住友商事と接点を持ち、「従業員の採用に悩んでいる」と相談したことがきっかけで、Hakobuneの事業を紹介されたという。

「鳥取県は人口減小が急速に進んでいて、若者がどんどん県外に流れていく。人の採用が年々難しくなっていて、人を採用できるかどうかが企業の存続にも関わる問題になっている。何か手を打たなければならないと思っていた」と笹山社長は話す。

約70人の従業員がマイカー通勤だというササヤマはHakobuneと契約し、6月以降EVを1台借りる。月額4万円程度のリース料のうち、会社が4割を負担し実際に通勤に使う従業員が6割を負担する。

現在、ガソリン代にあてている通勤手当は月6000~7000円ほどのため、会社負担は増える。利用する従業員も2万円を超える負担が発生するが、それでも個人でマイカーを維持する月当たりのコストに比べれば、相当安くなる。

「地方の中小企業では少しばかりの賃上げより、先進的な取り組みで社員に報いたい」(笹山社長)。ササヤマの取り組みに早速地元の新聞社も関心を示し、すでにじわりとマチの話題になっているという。

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