年金「結局、いつ受給が得?」悩む人に教えたい真実 意外と知らない「損益分岐点」と受給の注意点

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●繰り上げ受給の注意点

・年金額の減額は生涯続く

繰り上げ受給も一度申請すると取り消せません。繰り上げ受給すると、本来よりも少ない額の年金を生涯受け取り続けることになります。

・繰り上げ受給は国民年金・厚生年金同時に行う

繰り下げ受給は国民年金と厚生年金を別々にできますが、繰り上げ受給は国民年金と厚生年金同時にしなければなりません。

・国民年金の任意加入ができなくなる

繰り上げ受給すると、国民年金の任意加入ができなくなるため、国民年金に未納額があっても年金が増やせなくなります。また、国民年金保険料の追納もできなくなります。

・障害基礎年金や寡婦年金の対象外になる

老齢基礎年金を繰り上げ受給すると「65歳に達した」とみなされます。そのため、繰り上げ受給したあとに所定の障害状態になっても、「65歳未満」が対象の障害基礎年金はもらえなくなります。

同様に、妻が繰り上げ受給すると寡婦年金がもらえなくなります。寡婦年金を受給しているときに繰り上げ受給すると、寡婦年金を受け取る権利も消滅します。

●繰り下げ受給の注意点

・長生きできないと損

せっかく年金を繰り下げても、長生きできなければ損になります。75歳から年金をもらおうと待機していたのに、74歳で亡くなったとなれば、本人は年金を1円ももらえないことに。がんばって繰り下げても長生きできなければ損です。

・税金や社会保険料が増える

75歳まで年金を繰り下げると確かに年金額は84%増えますが、年金額が増えることで税金・社会保険料も増えるため、手取りが84%増えるわけではありません。

・繰り下げ受給で増えない年金がある

加給年金・振替加算・特別支給の老齢厚生年金は繰り下げ受給の対象外。それどころか、加給年金や振替加算は、年金を繰り下げている間はもらえません。

・遺族年金は65歳時点の金額で計算される

年金の繰り下げ中に亡くなり、遺族が遺族年金を受け取れる場合、遺族年金を計算するときの年金額は65歳時点の金額で計算されます。遺族は繰り下げ受給の恩恵が受けられません。

もらえる金額が増やせる繰り下げ受給のほうが基本的にはお得です。しかし、繰り上げ受給にも繰り下げ受給にも注意点はありますので、よく確認・比較のうえ、最後は自分で決めることが大切です。

次ページ繰り上げ受給・繰り下げ受給の「損益分岐点」
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