東日本大震災、その時、医薬品卸会社は《1》東邦薬品--非常時に備えた訓練が奏功、被災地への供給責任を果たす
医薬品卸大手4強の一角を占める東邦ホールディングス。同社傘下の東邦薬品は、東北6県を含む東日本をカバーする最大の子会社だ。宮城県や福島県など被災地の営業拠点は、3月11日に発生した東日本大震災でどのように対応し、医療機関への医薬品供給の責任を果たしたのか。東北地方を統括する同社の大久保正実常務取締役に聞いた。
--今回の大震災では、病院、診療所、調剤薬局も大きな被害に遭い、医薬品供給にも大きな問題が生じました。そうした中で、医薬品卸大手としてどう対応しましたか。
災害への備えはふだんから怠らずにやってきました。そのことが功を奏し、医薬品供給を継続できた。災害への備えとしては、1年に数度、社員の安否確認やコンピュータシステムの切り替えなど訓練を行っています。それらが役に立ちました。
震災翌日の12日土曜日昼には、停電やオンラインシステムの遮断状況、建物の被害などの状況を把握できました。オンラインシステムが機能しない営業所については、近隣の稼働できる営業所へのコンピュータ回線切り替えを12日昼に完了。南東北3県(宮城県、山形県、福島県)をカバーする本宮配送センター(TBC本宮、福島県本宮町)が地震の被害を受けたため、宮城県内については東京・平和島の配送センター(TBC東京)から東北事務所地下の倉庫に運び込む形の配送体制に切り替えました(編集部注:TBC本宮は応急工事が完了し4月12日より仕入れならびに商品供給を再開した)。
大久保正実・東邦薬品常務取締役
これまで東北地方は、地震や津波などの自然災害を何度も経験してきました。そうした中で、当社の営業所はどこも津波に被害を受けることがない高台に設けられています。今回の震災では、東北地方に所在する6営業部36営業所はすべて健在です。当社社員の中には津波被害で家を失った者もいます。ただし、幸いなことに全員無事でした。調剤部門では、35ある調剤薬局のうち、南三陸町や陸前高田など3カ所が津波の被害を受けました。
--こちら(東北事務所)はどうでしたか。
地震とともに、非常用発電装置が作動したため、保冷品を含めて医薬品の品質に問題は生じませんでした。また、非常用電話を備えており、その回線を使って東北大学病院や仙台社会保険病院、宮城厚生年金病院などと連絡を取ることができました。翌12日の受注にはきちんと対応できました。