精神科で10年働く看護師が使う「心をほぐす言葉」 どうすれば、子どもの心をゆるくさせられるか
「疑わずにいったん信じる」は、子どもを信じた事実を残すためにやっています。子どもって「ゲームやったら勉強する!」とか言いますよね。でも結局やらない(笑)。過去にこうしたことがあると大人は「どうせ」と疑います。でも大人も似たことをしますよね。ジムに入会したけれど行かない、みたいな。やるかどうかはそのときどきでちがうので、絶対にやるという結果を求めるより、まずは子どもを信じて着実に信頼を重ねるほうがいいと思います。
「(子どもの)感情を否定しない」は、感情に正解も不正解もないと思うからです。子どもは泣きたいから泣くんです。ただ、大人はその場にそぐわないと感情を抑えることができます。だから「そんなことで泣かないの」と言ってしまうんでしょうね。でも子どもは人生初の経験をたくさん積んでいる最中です。感情のコントロールが難しいのは当然なんです。
「余計な一言を言わない」も、ついやってしまうので気をつけています。大人は子どもの未熟さが目につくものなんですよね。それで「だから言ったのに」などと口走ってしまう。でもそれを言ってしまうと関係性が損なわれます。余計な一言に関しては本当に言わないだけでプラスになると思います。
――どれも大切な心がけですね。ただ、実行するのは難しそうです。
そうですよね。全部を完璧にできる人はすくないと思います。でも、だからといって「子どもへの対応をまちがわないようにしなきゃ」といつも思っていると、親自身が硬くなり、子どもを緊張させてしまいます。子どもと距離を縮めたいのにそれでは意味がありませんよね。そこでもう1つ、私が意識していることをお話ししたいと思います。それは、ユーモアを取りいれるということです。
じつは、かつて私も子どもの前で硬くなっていたことがありました。児童精神科に転職して1年目のことです。当時、私は前職でつらい思いをしたことから看護師としての自信を失っていました。そのため、しっかりしなくてはと張りつめた気持ちで仕事をしていたんです。
しかしあまりにも硬くなりすぎていたようで、あるとき教育担当の先輩に、「まじめすぎる。その感じだと子どもたちと打ち解けられないよ。おもしろくない大人と見られちゃうよ」と指摘されました。その言葉を受けて、子どもの心をほぐしたいと思っているのにこちらが壁をつくってはもうしわけないと考え、遊び心を取りいれることにしたんです。
ボケをかまして、ゆるくさせる
――どんなことをしたんですか?
しょうもないことです(笑)。朝「おはよう」と言うときにゆっくり頭を下げたり、夕方退勤するときに体を揺らしながら「バイバイ」と言ったり。要するにボケをかますんです。そして子どもから「なにしてんだよ」とツッコミが入ったら、「いいね、最高!」などと返します。このアクションは別に子どもを笑わせるのが目的ではありません。ちょっと気のゆるんだようすを見せることで、子どもが大人に話しかけるハードルを下げているんです。