リニア、「時速600キロで営業運転」の可能性 世界記録更新の先に何を狙うのか

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曇り空の下、最高速度を更新したリニア試験車両

時速600キロメートルを達成した今、次の関心事はさらなるスピードの追求はあるのか、そして、営業運転を時速600キロメートルで行う可能性はあるのか、という点に移る。

前者については、速度向上試験はいったん終了し、今後は営業運転に向けた課題の洗い出しなどの試験が重ねるという。後者についても、時速500キロメートルでの営業運転に変更はない。

だが、新幹線の歴史を見ていけば、東海道新幹線は1964年の開業時には時速210キロメートルにすぎなかったが、少しずつスピードアップしていき、現在は時速285キロメートルで運転している。東北新幹線は時速320キロメートルで運転している。

これに倣えば、2027年の開業時にリニアの速度が時速500キロメートルだとしても、少しずつ改善を重ねて、いずれは時速600キロメートルで営業走行する可能性は十分にある。その場合、所要時間40分と想定されている品川―名古屋間は7分短縮し、33分で結ばれることになる。

速度記録の影でもう1つの偉業

速度の世界記録更新の影に隠れる形となったが、4月14日にはリニア試験車両の1日当たりの走行距離が4064キロメートルを達成した。1車両の1日当たり走行距離が短いと、車両をたくさん用意する必要があり、コスト増につながってしまう。

新幹線の1日当たりの走行距離は2000キロメートル程度。つまり、新幹線の2倍の走行距離を達成したことになる。JR東海の社員の中には「スピードの世界記録達成と同じくらい、走行距離を達成したことも重要だ」と言う人もいる。

3月13日には、全長25キロメートルの南アルプストンネルの建設工事契約手続きが公表された。見積書の提出期限は8月12日で、今秋にも正式発注されるとみられる。工期は2025年10月末まで。完成すればリニア開業が目前に迫る。

2027年の開業に向けて、リニア事業は少しずつ動き始めている。とはいえ、トンネル工事に伴う大量の残土処分、水資源への影響など環境への対策はこれからだ。残された時間は決して長くない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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