「カネで解雇」は、本当に横行してしまうのか 「解決金制度」導入で労働者が負うリスク
「今回導入が検討されている制度は、裁判で『不当解雇』であると認められた場合だけを想定しています。注意しなければならないのは、会社が従業員に金銭を支払いさえすれば、どのような場合でも、解雇が有効になるという制度ではないということです」
たしかに「カネさえ払えば、いつでも解雇できる」ということになると、従業員は安心して働けない。
「たとえば、ある会社が、従業員から解雇無効を求める裁判を起こされたとしましょう。会社が提訴される前にその人に一定額の金銭を支払っていたとしても、それは言い訳にはなりません。解雇は有効にはならないのです」
しかし、不当解雇を認めるような制度は、労働者にとって不利益にならないのだろうか。
「これは、労働者の申し立てがあった場合に限って適用するという制度です。従業員が職場復帰を求める場合は、この制度を利用しないこともできます。よって、必ずしも労働者にとって不利になるわけではありません」
職場復帰を強く求める人のリスクは高まる
新たな問題が生じる可能性はないのだろうか。
「解雇が無効である場合に支払われる『解決金』の金額しだいでは、今回の制度を誤解する企業も出てくるでしょう。つまり、『~円を支払いさえすれば、従業員を辞めさせることができる』と勘違いしてしまうわけです。その結果、安易に解雇に踏み切ることにより、解雇数や紛争数が増加するおそれがあります。
また、解雇無効が争われている裁判の和解の場面でも、『解決金』額を一定の基準として、『退職を前提に、金銭を支払って解決する』和解の流れが、従来よりも強くなることも想定できます。職場復帰を強く求める従業員には、リスクが高まることを想定しておく必要があるでしょう」
山田弁護士はこのように話していた。
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