暴走している日本株はいずれ「正常化」で下落する 日本株買いを勧める3つの口実に根拠はあるか

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(3)東京証券取引所が、PBR(株価純資産倍率)の低い企業に対し、事態を改善するよう経営改革を迫っている

海外投資家からは、経営改革が「行われれば」買い材料だ、との声は聞く。すでに「素直に」低PBR銘柄に対して投資を始めた海外投資家もあるだろう。しかし、日本株投資の経験が長い海外投資家からは「東証に言われて改革ができるのなら、とっくにやっていただろう」との疑念が寄せられる。

現実に改革できる企業はあることはあるだろう。しかし、なぜそうした疑念が抱かれているかといえば、経験の長い投資家は、以前からずっと「日本企業によくなってほしい」という真摯な気持ちから、企業の経営陣に対し提言してきた。

そうした提言に対し、日本の経営者は「貴重なご意見をありがとうございます」と表面上は深々と頭を下げる。しかし結局「その後何もしなかった」といったことが多く、大いに失望させられてきたという思いが強い。

つまり、なぜ海外の長期投資家が日本企業の経営改革を信じにくいかといえば、これまで企業が投資家の思いを裏切り続けてきたためだ。自業自得だろう。

なるほど、東京市場としては「改革できない多数の企業が、東証によって退場させられ、改革できた少数の企業だけが残る」という展開になれば、ある程度魅力が高い市場に生まれ変わることができる。しかし、そのような展開は、現時点では「低PBR銘柄に投資したら、多くが上場廃止になる」という結末を意味する。

今の日本株買いは短期筋中心か

以上を踏まえると、足元の日本株の上昇は、近いうちに失望とともに息切れしそうだと考える。とくに今の海外投資家による日本株買いは、長期筋が本格的に買っているのではなく、短期筋が中心だと推察する。

そうした短期的な買いとは、例えば、日本株の投資経験が浅い海外投資家が低PBR企業の改革が行われると信じて買ってしまうことに先回りして日本株を買っておき、株価が上振れしてから売り逃げようといったものだ。前述のような買いの「口実」とされているものを「単なる目先のテーマ」と割り切って、先物などの買いを入れている短期筋もあろう。

筆者自身、あるいはほかの専門家が、海外投資家にヒアリングした結果を聞いても、百戦錬磨の長期投資家が本格的に日本株買いに出動している気配は乏しい。

もちろん、真の意味で日本企業が次々と経営を改革し、収益力を大いに高めて、実力で海外長期投資家の買いを本格的に招くという展開は大いに期待はしたい。しかし残念ながら、そうならない可能性が高いと懸念する。今すぐでないとしても、いずれ「正常化」という名の株価下落が到来しよう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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