暴走している日本株はいずれ「正常化」で下落する 日本株買いを勧める3つの口実に根拠はあるか

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こうした日本の内需非製造業の堅調さはあるものの、それでも最近の日本株の上昇は買われすぎだと懸念せざるをえない。そう考える背景は、日本株の買い材料だと唱えられているものが、ことごとく危ういからだ。

これまでの当コラムでも同様の主張を行ってきたので、以下は重複もあるが、主な日本株買いの「口実」とされているものを3つ列挙して、検討していきたい。

「危うい3つの買い口実」とは?

(1)日本は欧米と異なり金融環境が緩和的である

欧米で利上げが行われ、日本では緩和的な金融政策がとられてきたのは、別に最近になってのことではない。昨年、すでにそうなっていた。海外投資家などが最近になって日本の緩和的な環境に初めて気がついたかのような主張には、違和感がある。

(2)ウォーレン・バフェット氏が日本株投資に前向きだ

バフェット氏は確かに投資実績があり、高名な投資家だ。ただ、「バフェット氏が日本株を買うから自分も買おう」と単純に思い込む海外投資家ばかりなのだろうか。

筆者の過去の経験だが、前職で国内外の機関投資家向けに経済環境や市場見通しを説明する仕事に就いていたことがある。あるとき、ニューヨークに出張し、全米でもトップクラスのヘッジファンドの幹部と会って話をしたことがあった。最初、その幹部は極めて不機嫌だったのだが、話しているうちに表情がなぜか穏やかになってきた。すると、その幹部は口を開き、次のように語った。

「君は経済環境などに基づいて市場を分析し、市況の先行きを説明するから、評価できるね。実は、君の前に日本のある証券会社のセールスが来て『株価が上がる』というから、『なぜだ』と尋ねたら、『外国人投資家が大いに買うからです』と言うばかりだった、そこで怒って出入り禁止にしたばかりなんだよ。ついさっきまでその気分を引きずってしまっていて、本当に悪かったね」

長い間、運用で高い成績を出してきた投資家は、ほかの投資家が「買いだ」と言おうが「売りだ」と言おうが、自身の考えをしっかり持っていて、投資方針にブレがない。もし誰かが、そうした「まっとうな投資家」に対し、「バフェット氏が買うから、日本株を買いましょう」などと言えば、即時に「出入り禁止」となるだろう。

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