鹿島が独り勝ち!ゼネコン決算「明暗」わけた3要因 「毒饅頭」を食らわなかった異次元の受注戦略

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鹿島が独り勝ちになっている状況について、前出のIR担当者は次のように話す。「鹿島は2~3年前の受注競争が厳しい時期に、(安値受注しないように)グリップしていた。重点分野を絞り込むなど受注戦略も立てていた。逆に、拡大路線を維持するために無理をして受注を取りに行った会社は、いま業績が沈んでいる」

このIR担当者の指摘の真意は、各社の決算資料をつぶさに見ると読み解ける。ゼネコン大手決算の明暗を生んだ要因は、大きく3つある。

差を生んでいる要因の1つ目は、収益源を多様化できているかどうかだ。

数年前にまいた種が成果

下図を見てほしい。鹿島は前2023年3月期において、主力の建設(請け負い)事業以外の事業で710億円の売上総利益を計上し、これが全体利益を押し上げていることがわかる。今2024年3月期も建設事業以外で865億円の売上総利益を計画する。

鹿島では建設事業以外の事業としては、不動産を中心とする開発事業がその柱となっている。鹿島は1970年代に不動産開発事業に本格参入し、1990年ごろのバブル崩壊後でも開発事業から手を引かなかった。ほかのスーパーゼネコンに先駆けて、2018年には私募REIT(不動産投資信託)の運営を開始した。

近年も、欧米で流通倉庫や賃貸総合住宅を続々と開発。具体的には、アメリカにおける開発・運営中の案件は、流通倉庫が48件、賃貸集合住宅が38件に上る(ともに3月末時点)。これらをタイミングを見ながら、機動的に売却する方針だ。数年前に種をまいて育てていた開発事業が、いま収益柱として成長している。

対して、ほかの3社は建設事業以外の事業が大きく育っていない。大成建設は2022年5月に資産運用会社を設立し、2023年度中に私募REITを組成する計画。清水建設も2023年1月に、私募REITの運営を開始した。ただ、現時点ではまだ収益柱と言えるほどの水準にはない。

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