注目集める「住宅のメンテフリー」の意外な盲点 本当の意味での「サステナブル」とは何か?

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「高耐久」「メンテナンスフリー」な建材、工法を用いることは、修繕費用を抑えるうえで一定の効果があるのは確かだ。

ただし、だからといって何もしなくてよいわけではなく、必要に応じた維持管理を行うことが大切だ。「高耐久」「メンテナンスフリー」の建材、工法であったとしても、定期的な点検と維持管理があってこそ、本当の意味でサステナブルが実現するのである。

マンションでは修繕工事の周期延長が期待できるが…

これは戸建てに限らず、マンションにも言えることである。外壁に「高耐久」「メンテナンスフリー」の建材を用いたとしても、外壁の間の目地、つなぎ目は劣化する。マンションの外壁タイルの浮きや剥落が原因で落下に至り、通行人がケガをするトラブルも起きている。サステナブルな資材を使ったからといって、維持管理や点検が不要になることはない。

ただマンションの場合、メンテナンスや維持管理の方向性は、区分所有者だけでなく管理組合で決めていかなければならない。所有者の意志だけで点検や修繕が行える戸建てとは大きく異なる。マンションで特に重要になるのが、共用部分の「大規模修繕工事」だ。

中でも費用負担がかさむのが外壁の塗装や塗膜部分の修繕、防水工事など足場の仮設が必要になるものだ。こういった部分に、「高耐久」の建材を使うことで修繕の周期を延ばし、費用削減につなげることが可能となる。

またマンションの立地や築年数など、固有の事情で修繕の必要な箇所、周期にも差が出てくる。例えば日の当たる部分、紫外線の強い箇所や雨が当たる箇所のみ高耐久の資材を採用するなど、柔軟な修繕内容を提案してくれる施工会社を選べるかどうかが今後のマンション管理において大きなポイントとなってくる。

また、最近は、新築当初から修繕積立金が30年間一定である「均等積立方式」を採用するマンションも増えている。こういったマンションにおいては当初30年間、均等額の負担であるメリットはあるものの、マンションの維持管理コストが増加する30年目以降のコストが考慮されていないケースがある。

長期的な視点、50、60年以上の長いスパンで費用対効果を考えられた修繕計画となっているかどうか。「高耐久」の建材を用いた場合であっても、実現可能な修繕計画となっているかなどは、確認しておく必要がある。

建材や資材のサステナブル化は今後、さらに加速していき長期にわたり使える素材も増えていくと予想される。修繕費用を抑える意味でも高耐久、メンテナンスフリーの素材利用で得られるメリットは大きい。

ただし、戸建て・マンション共に定期的な点検やメンテンナンスが大前提となる。適切な維持管理があってこその、「高耐久」「メンテナンスフリー」の建材だとも言えるだろう。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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