注目集める「住宅のメンテフリー」の意外な盲点 本当の意味での「サステナブル」とは何か?

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そこで10年の瑕疵担保責任以外に、各施工会社、ハウスメーカーが独自の保証を用意しているケースも少なくない。長期保証制度、最長保証制度と呼ばれるもので、中には「60年保証」を売りにする施工会社・ハウスメーカーも存在する。「60年」の長期保証が受けられるのなら、施主(住人)のメンテナンスはほぼ不要ではないか、と思ってしまうのも無理はないかもしれない。

ただ、この長期保証が受けられるのは、定期的な点検と点検時の有料のメンテナンス工事がセットになった「条件付き」の場合がほとんどだ。メンテナンスが不要なのではなく、あくまで点検ありきの保証で、ハウスメーカーもしくは指定の業者による工事が前提となった保証制度にすぎない。「メンテナンスフリーの長期保証制度」ではないのである。

さらにもうひとつ、雨漏りや構造に関する保証と、建材そのものの保証期間は異なることを覚えておきたい。確かに最近、建材の進化・開発はめざましい。耐久性に優れた「サステナブル」な材料は保証期間も長くなっている。

例えば外壁のサイディング材など「30年保証」を約束している素材もあり、従来品に比べて退色が少ない、水や光を用いたセルフクリーニング機能を持つ建材などが該当する。

「メンテナンスフリー」は本当に「サステナブル」か

雨水で汚れを洗い落とすことのできる外壁材のメーカーサイトでは、新築から12年を経ても同様の美しさを誇る住宅の事例が紹介されているほか、目地に用いるシーリング材でも15年保証をうたう製品も出てきている。

サステナブルな機能を持ったサイディング材を用いることで、住宅の維持管理に必要なコストを減らすことはできるだろう。けれども、外壁ならば外壁の間の目地、つなぎ目に関しては一般的には10年ぐらいの周期で定期的なメンテンナンスを行う必要がある。

30年変色しないサイディング材を用いても、外壁の塗り直しはいずれ行う時期が来る。つまり、高耐久で保証期間が長い建材を用いても、住宅そのものの保証期間とは異なるわけだ。

しかし、こうした長期保証をうたう製品カタログの注意書きをよく読むと、海に近いエリアが長期保証の除外となっている場合もあり、住宅立地などによるケースバイケースである点にも注意が必要だ。

床材も同様にメンテナンスフリー、高耐久をうたう建材は増えてきている。こうした床材の多くはワックスやコーティングが不要で「メンテナンスフリー」として人気だ。

しかし、メンテナンスフリーではあるが、最終的には経年劣化を経て交換する必要がある「消費材」だ。木材を丁寧に手入れして大事に使うのとは真逆の結果であり、本当の意味での「サステナブル」の念に適しているのかどうか、疑問を感じざるをえない。

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