自治体ぐるみで被災住民を支援する小千谷市、一時帰宅も実現、ペットを連れ帰る人も-東日本大震災、その時自治体は《1》
大地震を経験した自治体であるだけに、被災住民への配慮は行き届いている。総合体育館2階の武道場などに設けられた避難所内は、卓球の仕切りフェンスで区切られ、プライバシーに配慮している(写真)。また、1日3度の食事として、市内の仕出し弁当の組合から、弁当が届けられる(写真)。汁物は市内のボランティア団体が交代で1日に一度、被災住民に配っている。
健康管理については、小千谷市の保健師13人が2名1組で毎日、体育館内を巡回。加えて健康相談コーナーを設けている。取材に応じた小千谷市保健福祉課の阿部尚子係長(保健師)によれば、「体育館にお越しになった当初は『慣れないので眠れない』『寒い』『人の足音がする』などと訴える方も少なくなかったが、現在は落ち着いている。病気が悪化したという方も聞かない」という。ただ、「情報がきちんと入ってこないことを不安に感じている方が多い」と阿部係長は続ける。
医療については、一般の診療および歯科診療とも、市内の医療機関が対応している。記者が訪れた日には、市内の精神科医が睡眠に関する講習会を体育館内の喫茶室で開催した(写真)。被災地の避難所とは異なり、「風邪やインフルエンザなどが流行している事実はない」(阿部係長)。保健師は体育館内の換気にも気を配っている。
ただ、被災住民の不安は消えていないという。「中越大震災時には2カ月で仮設住宅入居が完了したのに対して、今回は先が見えない。被災住民の方々は家に戻ることもできないという問題に直面している」(被災住民への支援に従事する草野薫・小千谷市教育委員会生涯学習スポーツ課課長)。
そうした中でも、被災住民のニーズをくみ取る努力が続けられている。