味の素「ヒット商品が出ない」組織改革の苦闘 社長肝いりプロジェクトで「優等生社員」に喝

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

藤江社長は岡本氏にシンプルな指示を出した。「社内に横串を刺してほしい」。縦割りの組織に藤江社長も危機感を覚えていたのだろう。これがマーケティングデザインセンターの出発点となった。

ヒットを生み出すために、どんな組織が必要か。岡本氏がたどり着いた課題は、味の素が個々の消費者に向き合えていない事実だった。同じ客が調味料やスープ、冷凍餃子も購入しているのに、組織は商品カテゴリーごとの縦割り構造で、事業部別に開発やマーケティングが行われている。

また、スーパーやコンビニなど流通各社と強固な取引関係を誇る反面、実際に商品を購入する客とのつながりは薄く、「顔」は見えにくくなっていた。広告もSNS等が普及する中、従来のマス媒体軸の発信から抜けきれずにいた。

消費者とつながり、商品開発を進める

「マス向けに平均点、最大公約数的な商品を開発して売って終わり。事業ごとにバラバラにお客様に向かっているのが今の姿だ」(岡本氏)

この反省から、マーケティングデザインセンターを起点に消費者とつながり、商品開発を進めることで方向性が定まった。武器となるのが自社メディア「AJINOMOTO PARK(味の素パーク)」。1万件以上のレシピなど豊富なコンテンツを掲載するサイトで、ユニークユーザー(重複のないユーザー)数は月間840万~1000万人を誇る。

センター長を務める岡本達也氏。「消費者の声を聞き、その背景を抽出してバットを振れといっている。結果でなく、チャレンジした人を評価したい」(撮影:梅谷秀司)

多くの訪問客はレシピ閲覧が目的だが、登録会員数は3月現在で130万人いる。この「味の素ファン」を1000万人など、大幅に引き上げるのが目標だ。無料コンテンツを増やし、ECや外部と連携した健康関連のサービスなどの提供も検討する。

最大の目的はサイトを通じ、購買行動やオンラインコミュニティでの発言、アイデアなど、多種多様なビッグデータを収集することだ。データを解析し、特定客のニーズに合う商品を開発、販売する狙いがある。

次ページ過去の大ヒット商品の「教訓」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事