味の素「ヒット商品が出ない」組織改革の苦闘 社長肝いりプロジェクトで「優等生社員」に喝

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多くのロングセラー商品を持つ味の素が、ヒット商品が出ないジレンマを抱えている(撮影:梅谷秀司)

「ここ5~6年、ヒットが出ていない。取引先にも商品がつまらないと言われてしまっている」

味の素の藤江太郎社長は、複雑な胸中を明かす。冷凍食品やコーヒー関連以外で、年間売り上げ10億円を超えるような商品が出ていないのだ。

未曾有の原材料高の中でも、味の素の業績は絶好調だ。2023年3月期は3期連続で最高純利益を記録。海外は円安効果に加えて調味料の値上げを進めて業績を伸ばし、ヘルスケア事業も半導体向け絶縁材料が好調だ。同事業は今後も2桁成長が見込まれる。

磐石に見えるが、抱える悩みは深い。海外ではタイの調味料、ラーメンなど各地でヒットが生まれている。しかし本丸の国内食品事業は渋い状況だ。日清食品が栄養バランスを重視した「完全メシ」シリーズをヒットさせるなど、ライバルの活躍も目立つ。定番の「ほんだし」「クックドゥ」「鍋キューブ」などに続くヒット商品の存在は、成長に不可欠だ。

社内有数のマーケターが新組織のトップに

状況を打破すべく、4月に発足したのが食品事業本部を横断する「マーケティングデザインセンター」。95人で始動した組織は、従来の商品開発プロセスを一変させ、年間売り上げ10億円超の新製品を複数生み出すことを目標に掲げる。以前のような「強い味の素」を取り戻せるか。

ヒット創出に向けた組織作りを進めるべく、藤江社長が役割を託したのは執行役常務の岡本達也氏。社内有数のマーケターで「ザ★チャーハン」など、数々のヒット商品に携わった人物だ。

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