セガが1000億円で買う「ゲーム会社」の真の価値 「アングリーバード」開発のロビオ社を買収へ

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このBeaconをセガでも活用できれば、より持続的なモバイルゲームの運営ができるようになる可能性もある。

「セガでも同じようなことはやっているが、すべてをカバーしているわけではない。われわれのセガのタイトルにも導入していきたい」(里見社長)

セガサミーHDは中期経営計画で、2024年3月期までを「既存IPのグローバルブランド化による収益基盤の増強」と「グローバルプレイヤーに向けての投資促進」の時期と定めている。さらに2026年3月期までに、オンライン型で世界的な大ヒットを狙ったAAA(トリプルエー)ランクのタイトルと定義される「Super Game」を創出することを掲げる。

ロビオ社の買収は、これらの計画を大きく前進させるものとなりそうだ。

早期に世界展開へとつなげられるか

もっとも、ゲーム業界は市場成長とともに競争も過熱している。

セガサミーHDのフリー・トゥー・プレイゲームの売上高(2023年1月〜3月)トップ3は「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」「PSO2 ニュージェネシス」「セガNET麻雀 MJ」だった。フリー・トゥー・プレイゲームの売上高の大部分を日本が占めている。

真の“グローバルプレイヤー”を目指すうえでは、ロビオ社の開発・運営能力を取り込み、自社の豊富なIPをモバイルなどのオンラインゲームでも早期に世界展開へとつなげることが欠かせない。

シナジーという観点では、ロビオ社のIPをどう活用するかもカギとなる。アングリーバードをはじめとした同社のIPはこれまでモバイルゲームが中心だったが、それ以外の分野への展開をサポートして事業拡大を図ることが求められる。

1000億円を投じたセガの賭けは吉と出るか。変化の激しいゲーム市場で、その答えは意外と早く見えてくるかもしれない。

武山 隼大 東洋経済 記者

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たけやま はやた / Hayata Takeyama

岐阜県出身。東京外国語大学国際社会学部モンゴル語専攻卒。在学中に西モンゴル・ホブド大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在ゲーム・玩具業界を担当。

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