セガが1000億円で買う「ゲーム会社」の真の価値 「アングリーバード」開発のロビオ社を買収へ

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「ファミ通モバイルゲーム白書2023」によると、2022年のモバイルゲーム世界市場規模は8兆9146億円となった。巣ごもり需要の収束により前年比97.2%と落ち着く形となったが、競争が激化する国内市場から成長を見込める世界に向け、グローバル展開できるモバイルゲームに活路を見出す企業も多い。

現状、セガのコンシューマ事業(家庭用・オンラインゲームなど)は、売上高の4割弱をモバイルゲームが占めている。ただ、そのモバイルゲームの9割近くは日本国内で稼いでいる状態だ。

国内モバイルゲーム市場の競争が激化する中、日本に偏重した収益構造は、セガにとって大きな課題だった。一方のロビオ社は、北米やヨーロッパなど日本以外での売り上げが大半を占める。買収により、セガは約1割にとどまっている海外売上比率を、単純合算ベースで一気に45%まで伸ばす算段だ。

セガが価値を見いだしたロビオ社の技術

今回の買収は、単にグローバルで人気があるIPを手に入れたかったからだけではない。

セガサミーHDの里見治紀社長は、冒頭のプレスカンファレンスにおいて「私たちの目的は、ロビオの高い開発力と経営力を学び、強化すること。セガがグローバル市場に打って出ることで、もう一段階大きな成長を遂げることができると考えている」と力を込めた。

カンファレンスに登壇したロビオ社のアレクサンドル・ペルティエ・ノーマンドCEO(中央左)とセガサミーHDの里見治紀代表(中央右)ら(写真:セガ)

そのロビオ社の開発・運営力を支えるのが「Beacon」だ。

Beaconとは、ロビオ社が開発したオンラインゲームの運営支援ツールのこと。プレイヤー識別や広告効果測定、決済、クロスプロモーション、機械学習など、ゲーム運営に必要なあらゆる業務サポートを行う。このツールを導入することで、ゲーム開発者はゲーム開発のコア部分に集中することができる。

Beaconは現在100人規模の体制で運営しており、ロビオ社の全ゲームに搭載されているという。

ロビオ社は同社の決算資料において、Beaconの成果を複数挙げている。例えば2015年に配信を開始した「アングリーバード2」はBeaconの活用により、2021年1月から2022年3月までの期間で、デイリーアクティブユーザー数が12%、平均売上高が7%増加したという。

またアメリカのアップル社が2021年4月にATT(ユーザーがアプリケーションにトラッキングしないよう要求できる)機能を導入したにもかかわらず、2022年までのユーザー獲得が競合他社より早く回復したとしている。

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