サントリー、2度の予測ミスはなぜ起きたか 「レモンジーナ」「ヨーグリーナ」の出荷停止

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ヨーグリーナの出荷停止を受けて、サントリー食品インターナショナルが開いた4月17日の会見

だが、発売日に店頭に並べるための注文だけで70万ケースあった。大塚執行役員は、「発売前段階の要請は大きかった。増産体制を整えたが、短期間での数量増に限界があった」と説明した。また、発売後の売れ行きが予想以上に好調だったため、スーパーやコンビニからの再注文が膨らみ、対応しきれなくなったという。

これまでサントリーは新製品の宣伝量を基に、試し買いの比率やリピート率を予測し、販売計画を立てる手法をとっていた。今回はそれが通用しなかった。会見で小郷副社長は、「宣伝量とともに知名度が上がるのではなく、事前にネットを通じて情報が拡散し、すぐに『買ってみたい』という行動が起きる。こうした動きを捉えきれていなかった」と反省の弁を述べている。

小売りからの反発は必至

短期間のうちに2度、しかも売れ行きの良い商品の出荷を停止したとなると、小売りからの反発も必至だ。「欠品を起こすと、小売りは予定していた売上がなくなる。空いた棚をPB(プライベート・ブランド)で穴埋めしても、簡単に補えない。メーカーは小売りの機会損失を補填するために、違約金を払う場合が多い」(食品業界関係者)と言われる。

一連の出荷停止で新商品の知名度が上がったとしても、小売りに迷惑をかける代償も大きいだけに、「現場が混乱するので、わざと(出荷停止を)やったとは考えにくい」(前出の食品関係者)。もっとも、ヨーグリーナの場合、発売前段階で引き合いの強さを把握しており、発売延期という判断をしていれば、2度目の出荷停止を防げた可能性もある。だが実際は、「発売後、1日、2日見ないと商品の需要は読めない」(大塚執行役員)として予定通り発売に踏み切った。

小郷副社長は会見で「ネット時代における新製品の需要予測は、改めて研究し直さなければならない」と述べている。販売直後の出荷停止を繰り返すと、小売りからの信頼を失うだけでなく、消費者の”疑念”も強まる。「3度目」を防ぐためにも、予測精度の向上が急務だ。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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