広島マツダ「障害者マネ動画」の謝罪が酷すぎる訳 従業員が炎上、会社の対応が火に油を注いだ

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なぜ、このような「異様な関係」になってしまうのか。少数の「ジャーナリスト」に影響力が偏っていること、加えて産業としての巨大さが原因だと私は考えている。

自動車業界の規模は巨大だが、発表される新車の数は少ない。国内の自動車産業の市場規模は約57兆円、新車販売台数は440万台超にも達するが、国内メーカーが発表する新車の種類はモデルチェンジを含めても、年間30程度に過ぎないのだ。

つまり、少数の「ジャーナリスト」の1車種に関する発信が巨額の売上を左右するという構造になっているのだ。自動車メーカーが少数の「ジャーナリスト」と「他業界では見られない関係」を結びたくなるのも当然だろう。

このような「異様な関係」は、私が記者として担当したIT業界ではありえない。「取材される側」の企業、サービスは無数にあり、なおかつ「注目企業」の移り変わりも実に激しい。メディア自体の数も多いので、少数の「ジャーナリスト」に影響力が偏ることもない。自動車業界とは異なり「取材する側」「取材される側」の双方に、特定の相手と「異様な関係」を構築する動機が生じにくいのだ。

加えて「報道機関」と呼ばれる社には、かなり厳格な取材倫理規定が存在することにも触れておきたい。私が在籍したテレビ東京もそうだが、企業から便宜供与を受けることは厳しく禁止されている。

取材に伴う交通費や宿泊費を企業に負担してもらうことは、もちろん「論外」。飲食の提供を受けることも禁止されている。ある新聞社では、企業広報が訪れたときに持参する手土産の菓子折りすら受け取ることができないほどだ。

ネット上ではマス「ゴ」ミと揶揄されがちな「報道機関」だが、取材対象である企業との関係に関しては、世間が想像する以上に厳格な社内ルールが存在しているのだ。記者としても社内で「一生の傷」になる処分の危険を犯してまで、企業と「異様な関係」を作ろうという者などいない。

広報の「鍛えられてなさ」も大きな問題だ

さて今回の広島マツダだが、謝罪対応を見て感じるのは「広報がまったく鍛えられていない」ということだ。

トヨタや日産、ホンダのように、自動車業界の「外」からも注目される存在となれば、様々なメディア、そして記者と接することになる。多岐にわたるメディアが集中する東京で、自動車業界「外」からの取材にも晒されるなかで、自ずと広報は鍛えられていく。

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