広島マツダ「障害者マネ動画」の謝罪が酷すぎる訳 従業員が炎上、会社の対応が火に油を注いだ

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なお、山根一郎社長の肩書きは公式サイトでは「COO」(編注:最高執行責任者の意)が付いているのだが、謝罪文ではその肩書きは見られない。

これでは、「山根社長は『ナンバー2』であることに、触れたくなかったのではないか」と思ってしまう人もいるだろう。

広報対応で「過ち」を犯した理由とは?

さて、広島マツダはなぜ、このような過ちを犯してしまったのだろうか。その原因を推測してみたい。

一般的に謝罪時に検討項目となるのが法的な側面だ。大企業であれば、謝罪文の公表前に法務部と協議することになる。

そして、今回の動画のように、「違法性は何もない」炎上事例も、世の中には少なからず存在する。だが、ここに落とし穴がある。「違法なことをしたわけではないのだから、何も徹底的に謝罪することはないのではないか」という感情が経営陣や広報のなかにあると、結果的に「中途半端な謝罪」になってしまいがちなのだ。

だが、企業に求められる行動規範は「違法かどうか」ではない。「法に反していない」というのは「当たり前」のことであって、最低限の基準に過ぎないからだ。「適法性」以上の「倫理観」を行動規範としなければ、いくら企業規模が大きくても「一流」とは見做されないものだ。

もうひとつ、今回のミスの遠因と思えるのが「自動車業界の広報の特殊性」だ。私の知人に複数の「元」マツダ広報がいる。モータージャーナリスト向けの試乗会を専門に扱うPR会社の役員と話したこともある。彼らと話して驚いたのは、自動車業界の広報の「特殊さ」だった。

私自身、広報PR戦略のコンサルタントとして独立する前は、テレビ東京の経済部でITや電機業界を担当するキャップ(記者の取りまとめ役)を経験している。それゆえ、ITや電機業界の取材、そして広報の現場については熟知しているつもりだ。

だが彼らの口から出たのは、私が知るITや電機業界の取材ではありえない逸話のオンパレードだった。有力な「ジャーナリスト」への新車の「極めて長期」の貸し出し、国内外での新車発表会への交通費を負担した招待、接待などは当たり前だという。企業と取材者との関係が、他の業界とはまったく異なる「異様さ」なのだ。

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