データを細かく分析すると、緊急性があまりない疾患の入院患者数の減少が続いている。入院全体の3割弱を占める消化器系の疾患では、直近6カ月の大腸ポリープの入院手術がコロナ前に比べて23.9%減少する一方、外来でできる日帰り手術が同22.7%増えていた。
分析を担当したMDVの宮田知明氏は、「波の回数を重ねるたびに入院患者数が少しずつ戻ってくると期待していたが、コロナ前ほどは戻っていない」と話す。そのうえで、「今後、コロナに関する(医療機関への)補助金がなくなるなか、収益に大きく影響する入院患者が戻ってこなければ、病院はますます厳しい運営を迫られるだろう」と、コメントしている。
それぞれの病院は、コロナ前の患者数には戻らないことを前提に、地域での役割を明確にしていかなくてはならない。では、現場にいる医療者はどんな思いでいるのだろうか。5類に移行する今、その思いを聞いた。
発熱外来受診者増で外来が滞る
等潤病院(東京都足立区)は季節性インフルエンザに対応するため、政府が緊急事態宣言を発令した2020年4月以前から発熱外来を開設している。
同院の伊藤雅史理事長は、「コロナ以前も発熱外来に患者が増えると相当のマンパワーが割かれて、一般外来で対応できる患者数が減ることがあった。5類移行後も、病院が発熱外来にどの程度、注力するかで外来患者数は変わってくるだろう」とみている。
危惧するのは、重篤化のリスクがある高齢者や持病がある人たちのコロナ感染だ。
「コロナ禍は、国や自治体などからの上意下達(じょういかたつ)で、急場しのぎではあったが、国民がほぼ共通のルールで対応してきた。5類移行により国民は、マスク着用や感染しているときの外出に関して、自主的に判断することになる。
その結果、熱が出て自宅で試した抗原検査で陽性となっても、自宅待機しない人が出てくる。そういう人が、たくさんの人が集まる場所で飲食などをすれば、ほかの人へと感染が広がり、基礎疾患のある人が重篤化することも普通に出てくる」
別の医師にも話を聞いた。
茨城県つくば市の閑静な住宅街の一角にある診療所、坂根Mクリニック。その駐車場の前には、今も「ここより先 体調不良の方 入室禁止」と書かれた看板が立っている。
一見、診療所の看板としては問題がありそうだが、コロナ禍の3年間、通常診療を続けながらコロナ疑いの患者や、コロナ患者の診療を続けるための、苦肉の策だ。
「当院は循環器内科が専門。コロナ重症化リスクが高い高血圧や脂質異常、糖尿病、肥満といった生活習慣病で通院している患者さん、心臓病を患う高齢の患者さんが多いため、早期からコロナ対応を開始しました。2021年6月には発熱外来を立ち上げています」と、坂根みち子理事長は言う。
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