83歳の志茂田景樹「やりたいことはやり残すな」 悩みを抱える若い世代に伝えたいメッセージ
開業医の知人は、奥さんに先立たれたのを機にクリニックを閉めて、スペインに移住し小規模のワイナリーを始めた。
窯場を併設して自分の陶芸作品でワインを飲ませるワインカフェもオープンさせた。
彼はワインが好きで、陶芸が趣味だったんだ。
数年後、その人は無一文に近い状態で帰国した。子どもがいなかったこともあって、施設に入った。
「やりたいことをやれてよかった、と言っているよ。本気で、そう思っているようだ」
彼と会った友人の話だ。
やりたいことはやってみろ。うまくいくか、いかないかは二の次でいいってことだ。
そのほうが豊かな人生になるぞ。
やりたいことをやらなかったRさんと、やりたいことをやった開業医の2人を見ればわかるだろ。
職を転々とした志茂田景樹
ところで、今、まぼろしのような声を聞いたぞ。
「お前はどうだったんだよ?」
僕を咎める声をな。
多感なはずの少年時代も、社会に出る前段階である大学生になっても、特別にやりたいことってなかったんだよ。だから、職を転々としたんだ。初期は頭を下げて成績を上げなければならない営業畑、中期は頭を下げないですむどころか、上から目線でもいけた探偵、興信所調査員などの調査畑、後期は建設、鉄道、テレビ関係などの業界紙記者畑だった。
どうだ、段々と作家世界へ近づいているだろう。自分じゃ意識できなかったけれど、僕の心の奥底には作家になりてえという不遜なほどのやりたいことが横たわっていて、遠回りしながらもやりたいことをやってきたんだぜ。