83歳の志茂田景樹「やりたいことはやり残すな」 悩みを抱える若い世代に伝えたいメッセージ
何だか回りくどく盛った強弁をしているようだけどな、そういうことだ。
もう1度言っておく。やりたいことがあったら、しれっとでもいいからやっておくんだぞ。
受け入れる懐を常に深くしておけば、人から得られるものが尽きることはない
ある人と距離をおきたいと思ったら、
受け入れるパワーが落ちたのかもしれない。
その人から得られるものが尽きたと思うのは傲慢である。
受け入れる懐を常に深くしておけば尽きることはない。
人が持っているものはそういう意味では無限に近い。」
旧国鉄の工事畑の職員だった亡父から聞いた話だ。
亡父の上司に、旧制の高等工業学校卒のYさんという人がいた。
偉ぶらず、細かいところまで気を配る人柄に打たれ、叩き上げの父はYさんをリスペクトして、終生の付き合いをしていた。
僕も10回ぐらい会ったことがあるので、Yさんの人柄はよく承知しているのよ。
Yさんの許に難関の国立大工学部卒のエリートが配属になった。そいつはYさんによくなついて、父に言わせれば上司部下というより、師匠と弟子の関係に近かったらしい。Yさんも、本当によく面倒を見ていたんだと。
ところが、Yさんに定年が迫ると、エリートの若造は誰が見てもおかしいほど、Yさんと距離をとり始めたんだってよ。
そいつが異動で栄転になったときも、それを喜ぶYさんに対し、木で鼻をくくったような態度だったという。
見かねた父があとで文句をつけたら、
「あの人から吸収するものは、もうないんですよ。抜け殻ですから」
そういう言葉が返ってきたらしい。
この件について、父が母に次のように言ったのをよく覚えている。
「あいつはダメだな。Yさんからもう吸収するものがねえだと。とんでもねえ。傲慢になって、Yさんから吸収する意欲が衰えたんだ。学歴がピカピカでもああいう野郎はダメだ」
それから10年も経った頃かな。旧国鉄を退職した仲間たちとの飲み会に参加した父は、そのエリートの消息を知った。