「スラムダンク」中国人がこんなにも熱狂する背景 聖地巡礼として訪日客観光にも期待高まる

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実話を基にし、日本でヒットした実写映画『ケイコ 目を澄ませて』も豆瓣で1万件を超えるレビューが投稿され、中国の動画サイトで今年2月に配信された。中国人にとって馴染みのない作品でも、日本で評価され、日本語がわかる中国人が鑑賞するようになれば、中国市場の入り口がぐっと広がるというわけだ。

日本作品は固定ファンがついているため、中国でヒットすれば1億~2億元の興行収入を見込める。中国市場全体で見ると決して大きくはないのだが、日本の映画業界からすれば有望市場にほかならない。

「聖地巡礼」インバウンドにも期待

特にゼロコロナ政策が終了し、リベンジ消費が期待される2023年前半は、日本作品としては過去最多ペースの10作品前後が公開される見込みで、『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』(日本で2002年公開)、『天空の城ラピュタ』(日本で1986年公開)など過去の名作も投入される。

スラムダンクに先立つ4月14日には、『ちょっと思い出しただけ』の上映が始まり、中国向け先行上映会でのトークイベントに主演の伊藤沙莉と松居大悟監督がオンラインで参加した。

コンテンツのヒットは日本のインバウンドとも深く関係しており、コロナ前は『スラムダンク』の高校がある鎌倉と、『君の名は。』の舞台である飛騨高山が、中国人にとって最も有名な(アニメやドラマの登場先を巡る)「聖地巡礼」スポットだった。

海外旅行復活の流れに乗って、中国のSNSやブログでは『スラムダンク』『すずめの戸締り』などの作品に登場するスポットへの行き方を指南するコンテンツが増えており、今後の作品によっては訪日旅行先の多様化につながりそうだ。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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