「スラムダンク」中国人がこんなにも熱狂する背景 聖地巡礼として訪日客観光にも期待高まる

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来場者にはスポーツの試合で使われるスティックバルーン(応援棒)が配られ、「流川命」「全国制覇」と書かれた横断幕やうちわも投入された。

上映前には北京大などのバスケチームがダンク対決をし、チアガールのパフォーマンスで盛り上げた。観客は劇中の応援団として、上映中も大声援を送った。

北京大学でのスラムダンク上映会の様子(写真:北京大学公式weibo)

中国はバスケ人気が非常に高く、大学のキャンパスには至る所にバスケのリングが設置され、学生たちがゲームに興じている。『スラムダンク』の先行上映会には湘北ユニフォームを着て来場するようなコアな作品ファンだけでなく、普通のバスケファンやイベント好きな学生も多く来場した。

北京大学でのスラムダンク上映会の様子(写真:北京大学公式weibo)

さらに動画・写真映えする演出、会場の熱気がSNSでの拡散につながり、ターゲット層の30~40代の鑑賞を後押ししただけでなく、幅広い世代に認知を高めた。

上映開始後の複数の調査によると観客の半数が30代で、40代も2割いる。男女比は半々で、学歴は大卒以上が85%を占める。

上映開始間もない今は、中年の青春回帰需要が爆発しているが、これだけ話題になったことで、4月末の大型連休でより広い層を獲得できそうだ。

改めて日本作品が注目されている

『すずめの戸締まり』と『スラムダンク』が同時期に歴史的な記録をたたき出したことで、中国では改めて日本作品が注目されている。同国で公開される日本作品は、映画市場の成長に伴って2010年代後半から急増し、2018年、2019年に2年連続で過去最多を更新した。

両年の興行収入をみると、いずれも『ドラえもん』『名探偵コナン』の劇場版、日本公開から長い年月を経て中国で上映された宮崎駿作品がトップ5入りするなど、アニメが上位を占めているが、実写版の上映も増え、2018年の『万引き家族』(9700万元:約18億8700万円)を皮切りに、1億元に迫るヒットが出始めている。

2020~2022年はコロナ禍で映画館の営業が大きく制限され、日本作品の公開本数も激減したが、2022年2月に中国で封切られた『花束みたいな恋をした』は4カ月のロングランとなり、興行収入は9500万元(約18億4800万円)に達した。中国最大の市場である上海がこの期間はロックダウンで壊滅状態だったことを考えると望外の健闘と言っていい。

ヒットする日本映画には「蓄積」という共通点がある。

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