HPVワクチン「男性も接種したほうがいい」の理由 頸がんだけじゃない、陰茎や咽頭がんの予防も

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このような研究が進むのは欧米だけではない。男性大学生のHPVワクチンの認知度が低く、ワクチンを打とうとしないことを問題視した論文が、中国やサウジアラビアなど世界各国から大量に発表されている。

では、日本はどうか。厚労省は2020年12月に、男児に対する4価のガーダシルの接種を承認した。適応は肛門がんと尖圭(せんけい)コンジローマの予防だ。最新の9価ワクチンは男児に対して未承認だが、咽頭がんなどを起こしやすいHPV-16型をカバーする。

アメリカではすでに4価のガーダシルは市販されておらず、男児にもガーダシル9が接種されている。

日本では、9歳以上の女性に対してはすでに承認されているが、男性に対しては未承認だ。現在、メルク社の日本法人であるMSD社が、2020年11月から16~26歳、2021年5月から9~15歳の男性の第三相臨床試験を開始しており、現在、進行中だ。このあたりも、日米では大きな差がある。一刻も早い承認を期待したい。

男性の接種は自己負担で5万円

日本の問題は“ガーダシル9が使えないこと”だけではない。お金の問題も深刻だ。女性への接種と違い、男性への接種は法定接種の対象となっていないため、費用は自己負担で、多くの医療機関で3回接種の費用は約5万円となる。これでは、多くの家庭が接種に躊躇するだろう。

政府は一刻も早く法定接種に加えるべきだが、それには時間がかかるだろう。当面、私は、保護者や大学生から相談を受けると、接種を勧めている。それは、高額だが、5万円でがんから身を守ることができるからだ。日本人の初体験の平均年齢は男女とも約20歳という。大学生になると性交渉の経験が増える。つまり、HPV感染のリスクが増える。大学入学時にHPVワクチンの接種をお勧めしたい。

2020年12月に男児に対する接種を承認した4価のガーダシル(写真:MSD提供)
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上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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