中国で進む「世界を変える」バッテリー開発の全容 リチウムイオン電池より安くて高性能
中国のバッテリー製造会社の幹部は取材に対し、リチウムイオン電池のセルをナトリウムイオン電池のセルとよく似た方法で製造する手法を昨年見つけ出したため、同じ設備での製造が可能だと語った。
電気自動車(EV)用バッテリーで世界最大のシェアを持つ中国の巨大企業CATLは、1つのEV用バッテリーパックにナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池のセルを組み合わせる方法を開発したとしている。ナトリウムイオン電池のコスト競争力と低温性能に、リチウムイオン電池の航続距離性能をミックスさせる技術だ。同社によると、こうした混合バッテリーパックを量産する準備はすでに整っている。
「商業化の準備はできている」。CATL研究院副院長の黄起森氏は、中国福建省寧徳市にある本社で行ったインタビューで、そう述べた。
CATLは長沙の化学企業にも部分的に頼っているが、ナトリウム電池製造の大規模ラインを最近、寧徳に建設した。
商業化で主導権を握る中国
ナトリウムへの注目は多国籍企業でも高まっている。「リチウムのピーク需要を削り取るものになるだろう」。世界最大の鉱業会社BHPの最高経営責任者マイク・ヘンリー氏は、「特定の用途ではリチウムがナトリウムに取って代わられるのは間違いない」と話す。
ナトリウムをバッテリーに使う研究は1970年代に本格化し、その後はアメリカが主導。日本の研究者によって十数年前に決定的な進歩がもたらされたが、以降は中国企業が商業化でリードを築くようになった。
コンサルティング会社のベンチマーク・ミネラルズによると、現在計画中または建設中のナトリウムイオン電池工場は世界に20存在するが、うち16工場は中国に立地する。2年後には、中国が世界のナトリウムイオン電池製造能力の約95%を占めることになるだろう。