60代母が40代息子を…「老障介護」の過酷な実態 障害者の「脱施設化」の裏で起きている現実

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この問題を解決しようと、2020年、重度障害者の就労支援事業(正式名称は、雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業)が始まった。費用は原則として国が2分の1、都道府県と区市町村が4分の1ずつ負担する。利用者の申請を受け、仕事中の介助費用を補助する制度である。

ところがこの事業は自治体が実施するか否かを決める任意事業となっており、昨年10月時点での利用者は全国26区市町村でわずか92人しかいない。重度訪問介護の利用者は全国で約1万2000人。このうち就労者は約800人。本来適用されるべき人の1割にも満たないのである。

「なぜ利用が進まないか。そもそも事業自体を知らない自治体が多いのが最大の理由です。しかも支援の可否は、担当職員の『裁量』に任されているのが問題を大きくしています」と、土屋の高浜氏は話す。

18歳以下は重度訪問介護サービスを受けられない

もう1つの問題は、年齢制限だと高浜氏は指摘する。「従来の制度では18歳未満の障害者は重度訪問介護のサービスを受けられません。こうした制度が障害児をケアする家庭を物理的にも精神的にも追い込んでしまっているのです」。

このため、たとえば障害児が学校に通学しようとした場合、親が送迎せざるを得ない。また、18歳以上のように長時間にわたってヘルパーを利用することができないため、親や家族にかかる負担は膨大だ。障害児が学校に通えないとなると、家庭に引きこもるケースなども予想され、将来的な就業に支障をきたす可能性もある。となれば、余計自立は難しくなってしまう。

様々な課題を抱えている老障介護だが、どのように解決へと導けばよいのか。2回目では、さらに踏み込んだ現状と解決策をお届けしたい。

吉田 由紀子 フリーライター

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よしだゆきこ / Yukiko Yoshida

大学卒業後、出版社に入社。記事ライターとして活動した後、独立。構成作家を経て、現在は経済ライターとして多方面で執筆。主な執筆領域は、医療、福祉、労働問題など。

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