60代母が40代息子を…「老障介護」の過酷な実態 障害者の「脱施設化」の裏で起きている現実

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「確かに障害者介護に問題が多いのは事実です。弊社もその現状を日々実感しています。ですが、施設への入所者を減らし、地域で生活する。こういう流れは今に始まったことではありません」と話すのは、重度の障害者を対象とした訪問介護事業を展開してきた土屋の代表取締役・高浜敏之氏だ。同社は現在、全国に51の事業所を構え、これまで700人以上の障害者をケアしてきた。

「福祉政策が進んでいる北欧諸国では、1950年代にノーマライゼーションという社会理念が生まれました。この理念のもと、障害者と健常者を区別することなく、社会生活を共にする潮流が進んでいるのです。日本でも実は1960年代後半から『脱施設化』は行われてきた歴史があります」(高浜氏)

在宅介護の方が社保費を削減させる

ちなみに、障害者は障害者総合支援法という法律により6段階に区分されている。障害度が最も低い人が1、最も重い人が6とされている。この区分により介護サービスを受けられる時間や支給額が異なっている。重度障害者は区分4以上を指す。

「実際に在宅介護のほうが、施設入居よりも社会保障費を削減できます。そういうメリットはあるものの、問題なのは、日本では在宅介護の環境が整備されてないことです。さらに介護人材も圧倒的に不足しています。弊社でも訪問介護ヘルパーの不足により、依頼を受けたものの、お断りしなければならないケースが相次いでいます。需要に対して供給がまったく追いついてない。これが現状なのです」(高浜氏)

土屋で人材不足の実態を把握するために、2022年1月から2023年2月までの相談件数を調査したところ、相談を受けたうちの64%を断らざるを得なかった、もしくは人手不足が解消されるまで保留にしなければならなかった、という厳しい現実が浮き彫りになった。

重度障害者の「脱施設化」を進める上での問題はほかにもある。

その1つが、障害者の「通勤や就労に対する支援」は介護保険の対象外になってしまうことだ。生活ではなく、個人の経済活動と見なされてしまうからである。つまり、障害者が仕事についた場合、雇用側が通勤や仕事中に必要な介助費用を負担せねばならず、これが重度障害者を雇用する上で支障になっているのだ。

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