60代母が40代息子を…「老障介護」の過酷な実態 障害者の「脱施設化」の裏で起きている現実

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夫は会社勤務のため、ふだんはなかなか協力できない。姉と弟もいるが、同様に仕事をしているため、直人さんの介護は、ほとんどできない状態である。そのため日常の世話は、母の幸子さんが1人で行わざるを得ない。

「息子は毎朝7時過ぎに起きます。すぐにトイレ介助を行い、衣服を着替えさせ、食事の介助もします。9時になると、デイサービスに送っていき、夕方には、また迎えに行きます。幸いにもおとなしい子ですので、大声を出したり、暴力を振るうことはないのですが、日常生活の大半は私が手助けしなければならない状態です」(山田幸子さん、以下同)

息子の直人さんは、難産で生まれ、出産直後は通常の呼吸ができなかった。これが原因かは不明だが、幸子さんは生後半年で息子の異変に気づき、病院を受診。その結果、医師から発達と知能に遅れがあると診断された。

4歳までは1人で歩くことができず、障害者が通う保育園に入園。小学校から高校までは養護学校へ通学し、現在は地元のデイサービスへ通っている。週に1回、グループホームに短期入所しているが、それ以外は、ほぼ在宅介護の状態である。電器店を営みながら、休みのない幸子さん負担は、想像に難くない。

息子に向けられる視線が強い

何より辛いのは、直人さんに向けられる視線。事情を知らない他人が、いかにも嫌そうな態度をとったり、中には逃げていく人もいるという。

「今はまだ私が自宅で面倒を見られますが、いずれできなくなる日がきます。息子が一人になってしまったら、誰が介護をしてくれるのか不安でたまりません。症状から考えて息子には一人暮らしは無理です。いずれは24時間ケアをしてくれる施設へ入所できればと願っているところです」

このような実態とは裏腹に、政府は施設の入所者を減らす政策を進めている。その根拠となるのが2006年に施行された障害者自立支援法である。その後、名称を障害者総合支援法と改め、3年ごとに改正を重ねているが、2022年の改正により、政府は、障害者が施設への入居ではなく、地域で生活することを推奨した。その結果、自宅介護が急増しているのである。

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