4日連続不通「舎人ライナー」に何が起きたのか パンタグラフの破損や気温上昇で架線トラブル

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異例といえる4日連続の一部運転見合わせ。日常の検査体制はどうなっているのだろうか。

交通局によると、内部規定で電車線については目視による「巡視点検」を月に1回、機能を確認する「細部点検」は年に1回実施しており、車両のパンタグラフの検査は目視により3日ごとに行っている。トラブル前の電車線の点検は4月8日の終車後、パンタグラフは10日に行っており、いずれも直近の点検では異常はなかったという。

日暮里・舎人ライナーの駅
日暮里・舎人ライナーは全線が高架だ(記者撮影)

相次いだトラブルを受け、交通局は13日に全車両のパンタグラフを一斉点検し、すべて異常がないことを確認した。また、電車線については24日までに全線と車庫内について緊急点検を行い、完了するまでの間は列車内から目視での点検を実施する。詳細な原因については引き続き調査を行っている。

気象庁のデータによると、電車線の伸びによるとみられるトラブルがあった10日の東京の気温は6時に7.6度だったが、12時には18.3度に上昇。翌日も6時は11.8度、12時は24度と変化が激しかった。ただ、夏になれば気温自体はさらに高くなる。再発を防ぐためには原因の調査とともに、点検体制などに問題がなかったかの検証も重要だ。

止まると困る「貴重な足」

日暮里・舎人ライナーは、それまで鉄道網の空白地帯だった足立区北部の足として2008年3月30日に開業し、今年2023年で15周年を迎えた。利用者数は開業以来伸び続け、2008年度に約4万8900人だった1日当たりの乗車人員は、コロナ禍前の2019年度には約9万700人にまで増加した。

2016年度以降は、国土交通省が毎年公表する都市鉄道の混雑率でワースト5の常連に。コロナ禍によって2021年度の1日乗車人員は約7万7500人に減少したものの、ほかの混雑路線も輸送人員が減ったことで相対的に混雑率が高止まりし、2020・2021年度は全国1位となっている。交通局は混雑対策として輸送力の高い新型車両の投入を進めており、2024年度までに開業時の車両12編成を新車に置き換える計画だ。

日暮里・舎人ライナー 300形
開業時に投入された300形車両(記者撮影)

並行する鉄道路線がなく、地域の貴重な交通機関である日暮里・舎人ライナー。不通になれば、代替ルートは時間のかかるバス利用か、やや離れた他線の駅に出るなどの不便を強いられる。混雑緩和策とともに、安定輸送の維持も大きな課題だ。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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