ChatGPT「イタリアで一時禁止」裏にある深い事情 消費者と公益性を重視する欧州で起こっていること

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「便利」に飛びつかない保守的なEU域内でChatGPTが利用できなくなることを望んでいる一般市民が多いとはいえないが、懸念は広がっている。とくに個人情報保護や年齢制限は譲れない話だ。

EUの欧州委員会が提出しているAIを規制する法律では、ユーザーにとって「最小限の」リスクから「許容できない」リスクまで段階的なアプローチを提案している。この指定によってChatGPTがEU域内での利用禁止につながる可能性は消えていない。加盟国と欧州議会議員は、新しい規制を適用するための妥協点を見つける必要に迫られている。

法律がテクノロジーに追いつかない欧州の現実

またEUは2024年2月、デジタル経済を構築するための法律、デジタルサービス法(DSA)を主要なプラットフォーム企業に対して適用する。この規制の背景には、とくにユーザーに対する責任を強化し、透明性の義務を導入する必要があるというEUの認識がある。

例えば、欧州委員会は今年2月、データのセキュリティー上の懸念から中国系の動画共有アプリ「TikTok」を職員が利用することを禁止した。

欧州委員会はTikTokを運営するバイトダンスだけでなく、あらゆるデジタルネットプラットフォーム提供企業に対して、DSAへの準拠を努力だけでなく、できるだけ早く具体的対策を提示するよう施している。違反した場合は、最大で3000万ユーロ(約44億円)、もしくは全世界における売上高6%のどちらか高いほうが罰金として課される。

現在、EUはデジタル・サービスを消費者保護の観点から、同時進行的に法整備や法改正を含め対応を急いでいる。理由はテクノロジーの進歩に法整備が追い付いていないからだ。

ChatGPTに対するEUの警戒感が強まる中、OpenAIがEUが納得できる対策を講じない場合、厳しい処分が下される可能性も否定できない。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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