ChatGPT「イタリアで一時禁止」裏にある深い事情 消費者と公益性を重視する欧州で起こっていること

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一方、起業家で電気自動車大手テスラのトップを務めるイーロン・マスク氏をはじめ、1000人以上のテクノロジー関係者らが最先端のAIの開発を半年間停止するよう呼びかけたのを受け、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は3月30日、同機関が2021年に採択したAI倫理勧告の完全実施を呼びかけた。

EUにとって、AI分野における戦略の主要なテーマは、「人間の基本的権利に対してAIがもたらすリスクを制御しながら、AIとその社会的および経済的可能性を開発すること」だ。AIに関連する新しい技術について、社会発展の機会であり、農業、モビリティ、健康などの分野で多くの社会的および経済的利益をもたらすものと考えている。

AIが市民の基本的な権利を損なう可能性

その一方で、AIが人間の尊厳、プライバシー、非差別の原則に対する権利など、市民の基本的な権利を損なう可能性があることも見過ごせないとしている。「AIの遊び心のある使用と並んで、より物議を醸すリスクが実際に表面化しており、大量の生体認証、ディープ・フェイクビデオの開発、中国での人の行動に基づく市民の評価、さらには大規模な個人データの処理、アメリカのデジタル多国籍企業による商業目的または政治目的の違法利用」も問題視している。

現時点では、OpenAIがイタリアの要求した条件をクリアできるかが焦点となっている。ただし、イタリアにしてみれば、EUの定めるGDPRに従っただけであり、EUとしては遅かれ早かれ、この問題に関与せざるをえない状況にある。

前出のヴォス氏は「競争上の理由、あるいはわれわれはすでに後れを取っているため、AIにもっと集中的に対処するには、実際にはもっと楽観的になる必要がある。しかし、欧州議会で起きていることは、ほとんどの議員が恐怖と懸念だけに支配され、排除しようとしている」ことを認めている。

同時にEDPBはAIを独立機関が監視する必要はあり、「既存のデータ保護法を修正するのは理にかなっている」と述べている。

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