「生きがい」「おひとりさま」賛美への強烈な違和感 75歳エッセイスト「生きがい考えたことない」

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75歳のエッセイスト勢古浩爾さんは、今の日本は「ひとり」を称賛する傾向が強くなりすぎていると語る(写真:shimi/PIXTA)
昨年の年間ベストセラー『80歳の壁』をはじめ、老後本ブームが続いています。その中では「人生に生きがいを持ち、おひとりさまでも楽しく生きよう」など前向きな生き方が説かれることも多いですが、自身も75歳を迎えたエッセイスト・勢古浩爾さんは違和感があると言います。新刊『無敵の老後』より、一部抜粋してお届けします。

「生きがいは何?」というくだらない質問

わたしは若いときから、やりがいとか生きがいなど考えたことがない。どうも「生きがい」とか「やりがい」という言葉は無理に考えられた言葉ではないか。わたしの場合、そんなものはもともと考えたことがないのだった。

するべきことをし、いやなことはできるだけしないようにしただけだった。

テレビのばかなリポーターが、あなたの生きがいは何ですか、とくだらんことを聞いたあたりから、「生きがい」や「やりがい」という言葉は世間に広まったのではないか。テレビがよくやるのだが、くだらん問いの形式に「あなたにとって○○とはなんですか?」というものがある。邪魔くさい問いだ。

そこには、訊かれたからにはなにか答えてよ、という暗黙の強制がある。

訊かれたほうも、なにか答えなければならないという義務感のようなものに駆られる。訊いてどうすんの? と訊き返してはいけないことになっている。なぜか訊いたほうが優位に立っているのだ。

「あなたにとって生きがいとはなんですか?」

実際、こんな形でしか、わたしたちは自分の「生きがい」はなにか、など、考えるきっかけはありはしない。そこでめんどうくさくなって「家族ですかね」と答えてしまう。「仕事です」という者もいよう。ばかばかしい。

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