中国エリート「大企業よりプチ肉体労働」選ぶ事情 長時間労働という泥沼生存競争からの大脱走

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あれから、ホワイトカラーの就職競争はますます厳しくなる一方だ。今年は各企業が採用を減らしている中で、記録的な数の大学生が卒業すると見込まれている。公式統計によると、16〜24歳の失業率は昨年夏の時点で20%に迫る状況となったが、大卒者の失業率はこれよりも高かった。

そのため、競争社会でもっと頑張るのではなく、これまであまり人気のなかったルートに魅力を見いだす人が増えている。

「勉強して教養を身につける目的は、自慢できる仕事に就くためではなく、もっと多くの可能性を受け入れる勇気を手に入れることにある」。こうした文言を掲げる、あるオンラインフォーラムには3万9000人を超えるメンバーが参加。露店を立ち上げる労力はどれくらいのものか、飲食店のウェイターの仕事はどのような感じなのか、といった質問がやりとりされている。

ブラックな職場から仕方なく退避する人も

実際に転職に踏み切る人はおそらく、まだごく少数にすぎない。オンラインフォーラムに投稿している人は、転職に踏み切るのではなく、単に質問しているだけだ。高収入の仕事を離れた人の中には、新しい仕事をどれだけ続けられるかわからないと認める人もいる。稼ぎよりも支出のほうが多いという人も少なくない。

地位の低い仕事に新しく就いて、それが気に入っていると話す中国の若者の中には、当初はそうした仕事をするつもりではなかった、という人も含まれる。

24歳のヨランダ・江は、昨年夏まで深圳で建築デザインの仕事をしていたが、30日間連続で働くよう命じられたことから退職。別のホワイトカラーの仕事を見つけるつもりだったものの、3カ月探してもいい就職先は見つからず、貯金も減ってきたため、大学寮の警備の仕事に就くことにした。

最初は恥ずかしくて家族や友だちにも言えなかったと話す江だが、今ではこの仕事のありがたみがわかるようになってきたと言う。12時間のシフトは確かに長いが、のんびりとしたもので、残業もなく、無料で寮に住めるという恩典も付いてくる。

月収は870ドルほどだが、これまでの手取りより20%も多い。裏返せば、大卒者があまりにも供給過剰となっているため、大卒ホワイトカラーの給料が頭打ちになり始めているということだ。

しかし江は、最終的には、もっと知的にやりがいのあるホワイトカラーの仕事に戻ることを目指していると話す。警備の仕事ののんびりとしたペースを生かして英語の勉強を進めているのは、次の仕事、たとえば外資の商社などへの就職につなげたいと考えているからだ。

江は「別に私は寝そべっているわけではない」と言う。「この時間は、休息、過渡期、学び、充電、そして人生の方向性について考えるためのものだと位置づけている」。

(執筆:Vivian Wang記者、Zixu Wang記者)
(C)2023 The New York Times

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