うつ、休職…「2度の無職」を経験した彼女の大発見 複数の会社で活躍する江藤美帆さんの場合

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うつ病の知識も増え、江藤さんの考えが変わってきたのは、うつ病の診断から半年ほど経ったころだ。

「なるほど、これは風邪と一緒で、『根性で治そう』ではなく、ちゃんと休んだほうがいいんだなって気づいて。焦って復帰しようとするのをやめたんです」

調子がいい日があっても、焦って仕事をしたり、誰かと会う約束をするのではなく、「気持ちが赴くままに」やりたいと感じることをするように心がけた。

誰かと約束してどこかに行くのもできない中…

そのなかでよりどころとなっていったのが、サッカーや野球などのスポーツ観戦だ。

「誰かと約束してご飯を食べに行く、みたいなことはできないんですよ。約束しても、当日になると具合が悪くなったりするので。

そういう意味では、スポーツ観戦は1人でふらっと行ける。行けば話す人がいるけど、別に何か強制されるわけじゃない。その距離感がすごくよかったんです。当時千葉に住んでいたので、千葉ロッテとジェフ千葉のシーズンチケットを買って、ほとんど毎試合応援に行っていました」

「やるべき」という考えを手放し、心から「やりたい」と思えることと巡り合った江藤さんは、みるみる回復していく。サッカー観戦に「どハマり」し、観戦のためにイギリスに旅行するほどに。そこで、のちに起業をすることになる商材とも巡り合った。

スポーツ観戦との出会いも追い風になり、江藤さんはうつ病の診断から2年半ほどで仕事に復帰。それ以降うつ病は再発していないという。

その後、サッカークラブのマーケティング部長に転じることになった江藤さん

 

当時を振り返り、江藤さんは「お金の心配が少なかったのは幸運だった」と語る。

「書籍の仕事はお金が入るタイミングがかなり遅いので、仕事を辞めた後も2、3年は収入がありました。だから『お金が尽きるまでは、思いっきり休もう』と腹をくくることができたんです。もし、フリーランスの立場で突然収入がゼロになってしまったら、思いっきり休むことができなかったかもしれません。それ以降、いつまた同じ状況になっても大丈夫なように、貯金はしています」

こうして1度目の休職期間を終えた江藤さんだが、37歳の頃、ふたたびキャリアブレイクを経験することになる。きっかけは、起業した会社の事業譲渡だった。

(この記事の後編はこちら

 

山中散歩さんによるキャリアブレイク連載、過去記事はこちらから
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山中 散歩 生き方編集者

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やまなか さんぽ / Sanpo Yamanaka

「生き方」に文章、写真、対話の場づくりを通して向き合っている。現在の関心領域は家族、パートナーシップ、キャリアブレイク、ナラティブ。関わっているプロジェクトは「グリーンズジョブ」「Proff Magazine」「ほめるBar」など。東洋経済オンラインにて「キャリアブレイク〜履歴書の空白と生きる」、greenz.jpにて「ほしい家族をつくる」を連載中。三度の飯より散歩が好き。

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