大成建設、前代未聞「ビル工事やり直し」の内幕 高層ビルの工事で虚偽報告と精度不良が発覚
発端は1月5日。NTT都市開発の担当者が現場を確認した際に、「このボルト、おかしくないか」と、計画とは違う仕様の施工箇所(仮設ボルトの穴にずれ)があることを見つけた。
この指摘を受けて、大成建設は1月10日あたりに、鉄骨の実測値などを書いた報告書を工事監理会社とNTT都市開発に提出した。
その後、大成建設が鉄骨の全数調査をしたところ、実数値と資料の計測値の食い違い、つまり報告書の虚偽が明らかになった。これは1月19日のことだ。梁の水平度合いの計測値を改ざんするなど、実際とは異なる数値を記載していた。
大成建設の広報担当者は、「工事課長代理が『数㎜程度のずれならば品質上問題ないだろう』と判断して、鉛筆をなめた数字を出した(虚偽の報告をした)」とする。納期が厳しいので、現場としてはそのまま進めてしまったのだろう。
実際には、鉄骨については、地上部では722カ所のうち70カ所、地下部では32カ所のうち7カ所が精度不良だった。契約で定めた柱の傾きの限界許容値を平均4㎜、最大で21㎜超過していた。コンクリートの床スラブも570カ所のうち245カ所で、平均で6㎜、最大で14㎜の違いがあった。
【2023年4月5日14時08分追記】初出時の精度不良の数字について修正しました。
そもそも、大成建設は1月にNTT都市開発の指摘を受けた時点で、この高層ビル工事の自主検査書類を作成していなかった。大成建設では通常、各事業所で決定した品質管理計画書を基に作成した施工計画にのっとり、自主検査を行っている。その自主検査書類を工事監理会社に提出し、監理者が現地の目視をして次の工程に進むという品質プロセスを踏む。
しかし、現場ではこのプロセスを踏襲していなかった。昨年9月に高層ビルの工事に着工後、「同9月末、そして11月に品質パトロール(社内の定期的なチェック体制)をした際に、この現場では自主検査書類の整備や工事監理会社への報告をしていないことがわかった」(大成建設の広報担当者)。
現場に注意し、今年2月には再びパトロールを予定していたので、さすがに自主検査書類ができあがる可能性は高かったが、遅きに失した。建築基準法は進行中の工事に適用されるものではないものの、全般を通して工程を急ぐあまりの、ずさんな品質管理だったと言わざるをえない。
なぜ鉄骨の「穴のずれ」に気づいたのか
気になるのは、NTT都市開発の担当者がどのようにして鉄骨の穴のずれに気づいたのかだ。この担当者は、人間の背よりも高い位置にあるボルトのサイズの違いを見つけた。前出の準大手ゼネコンの幹部は、「わずかな穴のずれなんて、とても気づきにくいものだ。デベロッパーの担当者ならば、普通は気づかない」と話す。
複数のゼネコン業界の関係者は、「不正を見つけたNTT開発の社員は、ゼネコン出身者ではないか」と見ている。「最近はゼネコンからデベロッパーに転職する人員が多く、デベロッパーの担当者の中にも、われわれと同じぐらいの間違いを見つける力を持っている人もいる」(マリコン大手の幹部)。
この点について、NTT都市開発の広報担当者は「(不正を見つけた)担当者の詳細について正式なコメントはできない」としながらも、「着工当時からプロジェクトを担当しており、定期的に現場を見ているため、ボルトが他の階と比べて細くなっている違和感に気づけたのだろう」(同)とする。
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