大成建設、前代未聞「ビル工事やり直し」の内幕 高層ビルの工事で虚偽報告と精度不良が発覚
今回の事件の背景には、ゼネコンに横たわる構造問題がある。準大手ゼネコンの幹部は次のように語る。「大成建設に限らず、ゼネコンは現場のチェック体制があまくなっている。クオリティーが落ちている」。
ゼネコンはこれまで、品質をチェックするために少しずつ、少しずつ、時間をかけて慎重に工事を進めていた。いまは労働環境の改善を目的に工事現場でも週休2日制を求められ、しかも民間が発注する建築工事の納期はかなり厳しい。全般に余裕がなく、品質管理の部分がどうしても、かつてに比べておろそかになっているという。
大成の「風通しの悪さ」を指摘する声も
大成建設の社内における、「風通しの悪さ」を指摘する向きもある。
今回は、まず工事監理会社への自主検査書類の提出が遅れていた。工事課長代理が慌てて作成した報告書を課長に渡した。その課長が内容を十分に確認せずに、工事監理会社やNTT都市開発に提出してしまった。
こうした一連の動きの責任をとって役員2人が辞任するが、「(虚偽報告や精度不良について)支社長や建築本部長にとどめ、経営トップにあげていなかったということだろう。大成建設の内部では、個人の意見が言いにくい雰囲気があるのかもしれない」と、前出とは別の業界関係者は指摘する。
今回の不正施工について、経営トップも重く受け止めているようだ。エンゲージメント(約束や契約)を大事にする大成建設の相川善郎社長は、支店長などの経営幹部に対して、品質管理プロセスの徹底を強く指示したという。
大成建設の広報担当者は「この問題が全国に広がることはない。本社・支店の品質管理検査やパトロールを(ほかの現場では)実行している」と話す。同社は今後の対策として、有識者を交えて再発防止策をとりまとめる方針だ。
今回の建て直しを受けて、工事損失は数百億円にのぼる可能性もある。大成建設は今2023年3月の通期純利益計画を670億円(前期比6.2%減)としているが、大幅減額となることは避けられないだろう。業績への影響だけでなく、顧客からの品質への信頼が損なわれることで、今後の受注に響いてくることも十分に考えられる。
社会のインフラ構築を担うゼネコンにとって、品質管理のプロセスは経営の根幹に関わるものだ。同じような事件が再発することはあってはならない。大成建設の経営姿勢が問われる。
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