アイルランド「ベーシックインカム」実験の実態 最低所得保障はアーティストの未来を変える?

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プログラムを支持する野党シン・フェイン党の文化問題担当スポークスパーソン、エンガス・オスノーデイは、支給期限切れでアーティストが「崖っぷち」に直面しないよう、実験終了よりもかなり前の段階でデータが欲しいと述べた。

さらに、このプログラムには多くの疑問があるといい、知名度のあるアーティストよりもキャリアの浅いアーティストに対するメリットが大きくなるのかどうか、あるいはロックバンド内で支給対象に選ばれたメンバーと選ばれなかったメンバーとの間に緊張が走るといったように思わぬ結果をもたらすことはないのか、といった疑問点を挙げた。

3年の期限というプレッシャー

「住宅ローンが払えないとか、スタジオを借りられないといったことを証明できるアーティストが困窮状態を乗り越えるための基金に資金を振り向けたほうがいいのかもしれない」とオスノーデイ。

受給者の中にも、この思いがけない収入を当然と考えている人はほとんどいない。脚本家のマルヴィーは最近、番組企画のためにテレビ局とミーティングを行い、夜遅くまで仕事をすることが多かったという。

「3年というのは本当に短い時間で、すでに半年が過ぎてしまったと自分に言い聞かせている。これが終わったときに、以前のような仕事に戻らなくてもいいようにしておきたいのだ」とマルヴィーは言った。

(執筆:Alex Marshall記者)
(C)2023 The New York Times

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