アイルランド「ベーシックインカム」実験の実態 最低所得保障はアーティストの未来を変える?

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フィンランド、カリフォルニア、ドイツで行われたこれまでの実験では、職業に関係なく給付金が支払われた。だが現在では、現金化に何カ月、あるいは何年もかかるプロジェクトに従事することのある文化労働者に注目した取り組みがいくつか試験的に行われている。

夢を追う資金を不安定なパートタイムの仕事に頼ることの多い画家、ダンサー、ミュージシャンなどが芸術の追求に集中できるようにするにはベーシックインカムが有効だと考えられるようになっているのだ。

アメリカでは昨年、「クリエイティブズ・リビルド・ニューヨーク」という民間資金による取り組みが始まった。2400人のアーティストに毎月1000ドルを支給するというものだ。サンフランシスコやミネソタでも同様のプログラムが進行している。

このようにアーティストに特化した取り組みの中でもアイルランドのプログラムが際立っているのは、政府が運営し、現金給付の効果を測るために受給者の経済状況、仕事のパターン、幸福度を厳密に分析することになっているからだ。受給者の生計は、支給を受けない対称群のアーティスト1000人と比較される。

「アーティストに制作の余裕をもたらす」

アイルランドの大臣として文化・芸術などを担当するキャサリン・マーティン——歌手として訓練を受けストリートミュージシャンをしていた経歴を持つ——は電話取材に対し、これは新型コロナ禍の中で3年前に生まれた政策アイデアだと語った。

音楽施設、劇場、美術館が閉鎖された状況を受けて、マーティンは政府として文化労働者の生存を支援する方法を探るよう特別委員会に諮問した。その答申で提案の中心となっていたのが、ベーシックインカムの試験的な導入だった。

「食卓に並ぶパンの心配をしなければならない状況では、創作の源に間違いなく影響が及ぶ」。マーティンによれば、「これはアーティストに制作する余裕をもたらす政策だ」。

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