成年後見は高齢者の財産を守っているのか大疑問 支援を求めたのに大事な資産を失った90歳女性
2月12日、長野県諏訪市の県道脇にあるビニールハウスに軽自動車が衝突し、炎上する事故が起きた。焼け跡から発見された焼死体の身元が判明したのは10日後。伊那市社会福祉協議会で、成年後見制度の事務を担当する36歳の男性だった。
その後、事態は急展開する。男性の残務処理をしていたところ、同社協が成年後見人として財産を管理していた5人の預貯金から、約1400万円が消えていたのだ。口座から無断で現金を引き出したのは、焼死した男性だった。
3月14日、同社協の篠田貞行会長が会見を開き、「このたびは本当に申し訳ありませんでした」と謝罪した。ある職員は、男性を「まじめな人だった」と言うが、仮想通貨取引で損失を出していた可能性が指摘されている。被害者には、遺族が全額を弁償するという。
成年後見制度は、家庭裁判所から選任された後見人が、認知機能が衰えた本人の代わりに預貯金や資産を管理し、福祉サービスの契約などをするもの。ところが、後見人となった人が被後見人の財産を横領する事件は後を絶たない。
社会福祉協議会が関係した事件も、今回が初めてではない。
チェックができていなかった
栃木県の鹿沼市社協では2021年7月、同社協が後見人となっている人の預貯金で計757万円の使途不明金が発覚、担当の50代男性職員が懲戒解雇となった。再発防止対策検討委員会は、同社協の後見業務は懲戒解雇の男性が1人で担当し、チェックができていなかったと指摘した。
伊那市社協の場合は4人の担当職員がいたが、被後見人の数は88人。単純計算で1人20人以上を担当していた。焼死した男性には上司となるセンター長がいたが、「個々の事例まで確認できていなかった」(同僚職員)と話す。
地域福祉の拠点である社協で、なぜこのようなことが起きるのか。
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