「汚いトイレを使う」息子を父がうれしく思った訳 7000kmのキャンピングカー旅で感じた「成長」

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いやいや、ちょっと待てよ、と私は焦った。少し古さは感じるが、トイレットペーパーまで設置されている普通の水洗トイレだ。こんな状況ですごすごと戻ってきた君の姿を見て、「こいつ、やばいな……こんなんでこの先大丈夫なのか……」とショックを受けた。

東京のタワーマンションに住んで、家の周りもピカピカのショッピングモールのような場所ばかりの中で生活していると、トイレというのは常にキレイでウォシュレットがあって、というのが当たり前になってしまうのか、と私は愕然としてしまったのだ。

息子のトイレがうれしいと感じた日

この話には後日談がある。

あれから5年後、アメリカのキャンピングカー旅行の途中、カリフォルニアの海沿いに強烈なトイレがあった。

ただ地面に穴だけあけて、木の橋を渡しているような、トイレというよりも便所だな。あの公園での君の姿が一瞬頭をよぎったが、「アメリカまで来たんだし」と、君は鼻をつまみながら果敢に挑戦しに行った。

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これにより私の心配は5年越しにようやく払拭されたのだった。息子のトイレがうれしいなんて、何年ぶりの感情だろうか。

まぁ、私だってトイレはキレイなほうがいい。でも、必要とあらば野糞するくらいのたくましさも人間には必要だ。キレイなところしか知らないのではなく、両方知っている、両方できるからこそ振り幅が大きくなり、そこに人間としての深みや面白みが生まれるのだ。

大学の話から随分脱線してしまったが、つまり同じように自分と近しい属性の人とだけ付き合っていくのではなく、意識的に違うタイプの人と出会っていくことで、君の人生の振り子は大きく揺れるようになるということだ。

大学というのは、それが自然とできる環境である。振り子の幅が大きい人ほど、人間としての魅力も増していく。

田端 信太郎 オンラインサロン「田端大学」塾長

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たばた しんたろう / Shintaro Tabata

1975年石川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン「R25」を立ち上げる。2005年、ライブドア入社、livedoorニュースを統括。2010年からコンデナスト・デジタルでVOGUE、GQ JAPAN、WIREDなどのWebサイトとデジタルマガジンの収益化を推進。

2012年NHN Japan(現LINE)執行役員に就任。その後、上級執行役員として法人ビジネスを担当し、2018年2月末に同社を退社。その後株式会社ZOZO、コミュニケーションデザイン室長に就任。2019年12月退任を発表。著書に『これからの会社員の教科書』『これからのお金の教科書』『部下を育ててはいけない』(SBクリエイティブ)、『ブランド人になれ! 』(幻冬舎)他。

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