ChatGPTを使いこなせない人と使いこなす人の差 対話型AIができること、できないことは何か

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最初に述べたように、対話型AIの出力内容は、間違っている可能性が高い。だから、データや資料そのものを教えてもらおうと期待しないほうがよい。

少なくとも、十分にチェックすることが必要だ。

対話型AIに期待できない第2は、アイデアそのものを考えてもらうことだ。

「……についてのアイデアはないか?」というような漠然とした指示では、ろくな答えは得られない。ごく普通に言われていることが出てくるだけだ。AIに創造を求めるのは、もともと無理なことなのである。

したがって、小説や映画の筋書きそのものを考えてもらうこともできない。「……の続編を書いてほしい」というような漠然とした指示では、実に陳腐な答えしか得られない。AIに小説を書かせるのであれば、人間が詳細に筋書きを考える必要がある。

AIに期待してはならないもう一つのことは、健康に関するアドバイスだ。誤った回答を信じれば、命に関わりかねない。 

AIに創造はできないが、知的作業の力強い手助けになる

多くの人は、対話型AIにクリエイティブな作業を求めようとしている。テーマだけ与えて論文を書いてもらうといったことだ。

これによって、手抜きができないかと期待している。しかし、すでに述べたように、AIは、この要求には応えてくれない。これは、もともと無理な要求なのだ。

だから、以上で述べた使用法のうち、「価値が高い利用法」として述べたことをいかに開拓できるかが重要だ。

結局のところ、「アイデアの発想」は、人間の仕事だという結論になる。ただし、AIはその仕事を補助してくれる。だから、決して無視したり排除したりしてはならない。

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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