トヨタが液体水素カローラでレースに挑む深い訳 川重、岩谷産業と組み、普及に向けた知見高める

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トヨタ自動車の佐藤恒治社長、川崎重工業の橋本康彦社長、岩谷産業の間島寛社長
左からトヨタ自動車の佐藤恒治次期社長、川崎重工業の橋本康彦社長、岩谷産業の間島寛社長(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

「使う側と供給する側が同じサイクルにいないと、こうした新しい試みは回っていきません。じゃなければ供給はできても使ってくれる人がいないとか、逆にクルマがよくても燃料が無いといったことになってしまいます。

大事なのは多くの仲間が多くのアプリケーションで使ってくれること。そうした仲間が増えていけば、結果的に値段が下がって、また使う人が増えます。モビリティという中でのトヨタの挑戦、仲間づくり、世界のムーヴメントにしていくという思い。それが新しい時代が来た時に、信じて世界に広めようとした人たちの意思だと思うんです。そういうリーダーシップが世界を変えていくと思いますし、水素はわれわれにとって欠くことのできないものですから、その意思ある行動に共感したわけです」(橋本社長)

80年前から水素を手掛けてきた岩谷産業

続けて、岩谷産業の間島寛社長はこのように話してくれた。

「当社は80年前から(エネルギーとしてではなく主として工業用として)水素を手掛けておりまして、現在では国内に50カ所以上の圧縮水素の水素ステーションを展開しています。課題は速く、安全な充填です。特に今後、大型車での使用を考えると、これは急務と思っています。そして、その先には液体水素がテーマとなってくると思います。ともにそこを目指す仲間として、水素をモビリティに使っていきたいと思います」

続けて、岩谷産業の津吉学専務 水素本部長は言う。

「昨年後半に液体水素という課題をいただきまして、正直言うと『ホントに?』という感じでした。というのも液体水素を燃料として走るというのは10年前くらいにBMWさんなどが手掛けたけれど結果として現実性が無いということになった。ずっと棚上げされていて、われわれもそういう目で見ていたんです。それを打ち破っていただいたというか、本気でやらはんねんなと。じゃあわれわれも一緒についていこうという、すごく面白いチャレンジだなと思っています」

意思に共感。それはもちろん理解できるが、川崎重工業も岩谷産業もボランティアではない。それなりの人と時間と資金を投じる以上、何らかの具体的な果実を、スーパー耐久という場で得る必要があるはずだ。そう聞くと、川崎重工業の上席理事 水素戦略本部の山本滋・副本部長は答えた。

「われわれも今、産業用や発電用など、天然ガスを燃料に使ったガスタービンの燃料を水素に変えようという取り組みをしています。そうすれば排ガスも水蒸気ですからいいということで、要は水素イコール燃料電池ではなく、そういったところもどんどんやっていくというトヨタさんと同じ志向を持っています。また、われわれは2輪も持っていて、こちらも水素エンジンに取り組んでいますので、そういう道もあると広めていただいたという意味でも、われわれにとってもアピールしやすくなるということを感じています」

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