トヨタが液体水素カローラでレースに挑む深い訳 川重、岩谷産業と組み、普及に向けた知見高める

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川崎重工の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」
川崎重工業の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」(写真:トヨタグローバルニュースルーム、提供:HySTRA)

「まさに上流側の“作る”のところから“運ぶ”のところまでを総合的に取り組まれ、水素サプライチェーンの構築に、非常に強い技術力と意思をもって進めておられます」

水素エンジンカローラでのレース開発の現場を牽引してきたGRカンパニー プレジデントにしてこの4月からはトヨタ自動車社長に就任する佐藤恒治氏はパートナーである川崎重工業についてこう評する。岩谷産業についても寄せる信頼は絶大だ。

岩谷産業は移動式の液体水素ステーションを新たに開発。今回は、ピットの中で作業ができるレベルの非常にコンパクトな、量産化を目指したインフラの技術開発のチャレンジも進んでいた。

「水素社会を実現していくうえでの総合的な課題(の解決)が、こうした連携のもとに進んでいくというのが、このレースの建て付けなんだろうと思います」(佐藤氏)

従来の圧縮気体水素のステーションは非常に大規模で、サーキットに専用の施設を設置して車両への水素充填を行っていた。それが液体水素ではサイズがほぼ4分の1となり、サーキットのピット内への設置が可能になったのである。

インフラを担う2社の必然性、意味

さて、ここで気になったのが両社にとって、それがモータースポーツの現場である必然性、意味がどれほどのものだったのかということだ。トヨタにとって、競争相手がいる中での車両開発は目標がきわめて明確であり、またスピード感も重要ということで、レースを通じた技術開発には大きな意味があるのはわかりやすい。

一方で、言わばインフラを担う両社にとってはどうか。会見後の質疑応答の際に、この質問にまず答えてくれたのは川崎重工業の橋本康彦社長だ。

「私たちにとっては、LNGの時と同じなんです。当時、天然ガスをわざわざ液化してそんなの誰が使うのかと言われていました。水素はLNGで歩んだのと同じような道を歩んでいると考えています」

川崎重工業は1981年に日本で初めてLNG運搬船を建造した。天然ガスをマイナス162℃で冷却して液化したLNGは大気汚染に繋がる有害物質の含有量が少なく、燃焼時のCO2発生量も少ないというメリットがある一方で、その超低温ゆえに運搬には専用船が必要であり、受け入れ基地も作らなければならないなど導入へのハードルは高かったが、今では日本が世界最大の輸入国となるほど広く普及している。

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